【檜枝岐】縁結び、縁切り...願い一手に 知る人ぞ知る「橋場のばんば」

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祭壇の左側には縁切りを願い新しいはさみ、右側には良縁を求めさびたはさみが供えられている

 尾瀬国立公園や伝統の檜枝岐歌舞伎で知られる檜枝岐村には、実は知る人ぞ知る観光スポットも多い。その一つが「橋場(はしば)のばんば」と呼ばれる、縁結びと縁切りという対極の願いを一手に担う全国でも珍しい神様だ。村の観光関係者はインターネットなどを活用して地道な周知活動を続けており、新たな観光スポットとして一層の知名度向上を目指している。

 橋場のばんばは、欠けた前歯を出して愛嬌(あいきょう)のある笑みを浮かべる老女(=ばんば)の石像で、歌舞伎が演じられる国指定重要有形民俗文化財「檜枝岐の舞台」へと続く石畳の参道の途中に祭られている。木々に囲まれたほこらに石像が鎮座し、その周囲に、たくさんのはさみが並ぶ。悪縁を切りたい人は新しいはさみを祭壇の左側に、良縁を結びたい人はさび付くなどして切れ味が悪くなった古いはさみを右側に供えていく。

 村によると、橋場のばんばは、その名が示すように、元々は村内の川に架かる橋のたもとにあり、水難から村の子どもを守る神様だった。1902(明治35)年に村が大洪水に襲われた際、石像が流されるのを心配した村民が背負って運び、現在の場所に移された。

 檜枝岐の舞台の近くに住む農業星房子さん(78)が、橋場のばんばにまつわる伝承を教えてくれた。石像が移された後、望まない縁組に悩んでいた村民の若い男性が婚約相手との縁を切りたいと願い、石像にはさみを供えたことから縁切り信仰が始まったのだという。

 さらに、「切れ味の悪いはさみを供えれば良縁に恵まれるのでは」と考える村民も増え、さまざまなはさみが供えられるようになったとされる。星さんは「時代の流れか、最近は悪縁を切りたい人の方が多いみたい」と笑う。

 村観光協会のホームページや観光パンフレットへの掲載、口コミもあって、尾瀬のシーズン中や歌舞伎の公演時などにはさみを供えに訪れる観光客が増えている。石像の頭におわんをかぶせると、どんな願いもかなえてくれるともいわれ、村の観光担当者は「パワースポットとしても知られるようになった。多くの人に足を運んでほしい」と期待を高めている。