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弁天山
(福島市)
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安寿と厨子王の住家の伝説
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弁天山のふもとには、阿武隈川が悠々と流れる
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福島市の中心部に位置し、桜の名所としても親しまれている弁天山。その中央付近の椿館は、「安寿と厨子王」の父といわれる平正氏(岩城判官政氏)の館(やかた)があったと伝えられる。明治・大正時代の文豪、森鴎外が、この物語を題材にした名作「山椒大夫」の中でも、2人の姉弟は、現在の福島市にあたる「岩代(いわしろ)の信夫郡(しのぶごおり)」に住家があったとされる。
山椒大夫は、もともと民間に伝承されていた伝説が説教浄瑠璃などになり全国に広まったものを小説化。筑紫(九州)に左遷された父を捜して旅に出た姉弟が、越後国(新潟県)で人買いにだまされて母、乳母と離れ離れになり、丹後国(京都府)の山椒大夫の下で奴隷として労働を強いられる。その後、厨子王は姉・安寿の死を乗り越え、母との再会を果たす。
椿館が、奥羽56郡の大守岩城判官政氏の居城との説は江戸時代の天保年間に編さんされた「信達一統志」などに記されており、城の土塁のような地形も残っている。鴎外も山椒大夫を発表する前に福島市を訪れて構想を練ったといわれるが、遺稿などは見つかっておらず、実在した人物かは分からない。しかし、地元の郷土史を研究している菅野利喜さん(85)は「戦で、当時の文献などは焼き払われた可能性がある。歴史へのロマンも含め、実在したと考えたい」と話す。
弁天山は現在、展望台が整備され福島市街地を一望できるスポット。ここから長い苦難の旅に出た幼い姉弟に、しばし思いをはせた。
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MAP |
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弁天山公園 福島市を流れる荒川と阿武隈川の合流点付近にあるのが弁天山。春には桜が咲き誇り花見客でにぎわう。休憩場所なども整備され憩いの場として親しまれている。
▽問い合わせ=福島市観光物産協会(電話024・525・3722) |
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2008年10月9日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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文・高橋敦司 写真・吉田義弘 )
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