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ふくしまの舞台
吉井忠が描いた隈畔
(福島市)
福島や東北が画家の立脚点

県立美術館常設展で展示している吉井の作品「解氷期」(1968年)

 福島市出身の画家吉井忠は1947(昭和22)年、県庁付近を墨でスケッチした「隈畔」(個人所蔵)を描いている。
 吉井は「土民派」と自らを呼び、東北の農村漁村を歩き、庶民の目線で大地に根差し生きる人々を描いた。東京に活動の拠点を置く一方で、故郷の福島を頻繁に訪れ、支援者や文化人との交流を大切にした。
 吉井の作品には、油絵「冬の安達太良山」や「裏磐梯」、鮮やかな色彩が際立つ水彩画「春の日の桧枝岐」など県内の風景を描いた作品も数多く残る。
 支援者の一人、福島市の元木晶子さんは、吉井が郷里に戻ると、元木さんの運転でスケッチ旅行に出掛けるなど間近で接した。吉井が80歳の時、中国・敦煌へも一緒に旅行した。「今より交通の便は悪く、体力的にも大変だったと思うが、先生を見ると、移動中でも絵筆を持っていたのが印象的だった」と振り返る。「何かに媚(こ)びるということがなく、絵を描くことに真摯(しんし)だった。先生の故郷愛の大きさも感じた」
 地元、県立美術館で過去2回開かれた企画展は、ほかの日本人画家には見られないほどの人気だったという。同館学芸員の増渕鏡子さんは「吉井は、画家としての立脚点を東北や福島に置き、作風を確立していった。確かな視座があったからこそ、地元の人に愛されているのではないか」と話す。吉井の作品を目の前にすると、決して声高ではないが、どんなときもぶれない一つの信念が伝わってくる。
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 吉井 忠 1908(明治41)年、福島市生まれ。旧制福島中学卒業後、画家を志し上京。20歳で帝展に入選、才能を発揮した。代表作は「麦の穂を持つ女」など。99年、死去。
 ▽問い合わせ=県立美術館(電話024・531・5511)。
【 48 】 2009年3月19日 福島民友新聞社・木曜ナビ ほっと面掲載
( 文・佐藤綾 写真・永山能久)  
 

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