全町避難続き管理困難に
人物、渦巻文…謎に満ちた壁画
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壁画に塩分
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【震災後】結晶化した塩分が付着した壁画(写真右上)。昨年12月に双葉町教委が行った立ち入り調査では、入り口付近の放射線量が毎時1.5マイクロシーベルトを計測した
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1967(昭和42)年、双葉町新山字清戸廹地区にある300基を超える大横穴墓群の一つ「76号横穴墓」から、ベンガラと呼ばれる鮮やかな赤色顔料で描かれた壁画が出土した。
装飾横穴墓は7世紀前半の制作と考えられ、壁画にはかぶとをかぶった人物や渦巻文、犬やシカなどの動物が描かれている。内容は狩猟図、被葬者の一代記などさまざまな説があるが、明確ではない。壁画に描かれた人物の大きさが国内最大級であることなどから学術的にも重要で、68年5月に国史跡に指定された。
玄室は縦、横2メートル、高さ1.56メートルのドーム型で、奥壁に壁画が描かれている。年4回の公開日には町内外から多くの見学者が訪れていた。横穴墓、壁画に東日本大震災による直接的な被害はなかったが、原発事故の影響で町が避難区域に指定されているため、再び公開される見通しは立っていない。
(双葉町教育委員会埼玉支所(電)0480・73・6843) |
「町民の歌」にも歌われる町のシンボル |
吉野 高光(よしの・たかみつ)さん
/双葉町教育委員会生涯学習課専門学芸員
震災発生以来、双葉町は埼玉県加須市への全町避難が続いています。約20年間清戸 横穴の保存に関わってきましたが、継続的な管理ができなくなってしまい残念です。
幸い、震災から半年後の立ち入り調査では横穴内部の損壊などはありませんでした。ただ、外部から植物の根が入り込んでいました。調査は3時間と限られた時間の中で行わなければならず、今後も万全な対応ができるかどうか不安が募ります。
横穴のある地層は海から隆起してできているため、温度や湿度の管理が不十分だと岩盤内の塩分が結晶化し、壁画に付着してしまいます。また、外部から入り込む植物の根を放置すると床や壁に定着してしまうため、定期的な除去が必要です。
「古きをしのぶ清戸の は高い文化の薫(かおり)を残し誇(ほこり)豊かに心を結ぶ」―。清戸 横穴は「双葉町民の歌」にも歌われる町のシンボルです。町民の皆さんに再び横穴を公開できる日が来るまで、しっかりと管理していきたいと思います。
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人物は国内最大級
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【震災前】町のシンボルでもある壁画。年4回の一般公開日には、町内外から見学者が訪れていた
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福島民友新聞社は、ふくしま復興支援プロジェクトの一環として、2012(平成24)年10月から13年5月まで、「ふる里の誇り ふたたび 福島遺産 百選 未来への歩み」を連載しました。
「福島遺産 百選」は、県内それぞれの地域で「ふる里の誇り」として守り継がれてきた有形無形の宝を後世に残していこうと、福島民友新聞社が07年に県内外に呼びかけ、選定しました。
しかし、計120件のうち31件の遺産が東日本大震災で被災しました。本プロジェクトは、あらためて地域の素晴らしい宝を再認識することで県民一人一人の誇りを取り戻し、「心の復興」につなげていくことを目的としたものです。 |
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ふくしまが誇る美しい自然、歴史、文化 |
地域の宝を復興の力に |
震災に耐えて |
東日本大震災に耐え、被害を免れた福島遺産もあります。これらは地域で県民に勇気と希望を与え続けています。
花見山(福島市)
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花卉農家の阿部一郎さんが、観光客に開放している約5ヘクタールの花見山公園と、十数軒の生産者が営む花畑の里山からなる。最も代表的な季節の春にはサクラやレンギョウ、モクレンが次々と花を咲かせ、百花繚乱(りょうらん)の華やかさに満ちる。(福島市観光課(電)024・525・3722)
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荒川の清流とかすみ堤(福島市)
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吾妻連峰を源として阿武隈川に合流する、全国的に知られる清流。一方で、その名の通り「暴れ川」としての側面も持つ。土石流や氾濫を抑えるため、江戸時代に造られた石積みの堤防は当時の姿そのままのものもあり、先人の知恵を今に伝える。(荒川資料室(電)024・593・3525)
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願成寺の仏像群(喜多方市)
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「木造阿弥陀(あみだ)如来・両脇侍坐像」は鎌倉時代の作といわれ、像高約2.4メートルの国指定重要文化財。右に観音菩薩(ぼさつ)、左に勢至菩薩を従え中央に鎮座する。県内でも有数の巨大仏像で「会津大仏」と呼ばれ、親しまれている。(願成寺(電)0241・22・1565)
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民友携帯サイト
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