人を受け入れる懐の深さ
震災後も変わらぬ営み
|
自然から学ぶ
|
|
高低差約40メートルを誇る雄滝。震災で、源流域は川がせき止められるなどの被害が出たが、子どもたちが今でも毎年体験活動に訪れ、自然の大切さを学んでいる
|
|
西郷村の甲子連峰から湧き出た水を源に、宮城県の太平洋側まで注ぐ阿武隈川。総延長は約240キロになり、古くから流域住民に多くの恵みをもたらしてきた。
源流域では、東日本大震災などの影響を受けたが、高低差約40メートルの雄滝(おだき)や約15メートルの雌滝(めだき)の雄大さは不変。樹齢300年を超え、樹高35メートルのカツラの巨木で霊験あらたかな神木「剣桂(けんかつら)」は枝を広げ、自然の営みが今なお続く。
登山道の入り口付近には、白河藩主松平定信公が好んで湯治したとされる奥甲子温泉があり、四季折々の自然と共に訪れる人の心と体を癒やしている。
源流域の自然を守る活動も盛んに行われている。最上流域にある川谷小(同村)と最下流域に位置する荒浜小(宮城県)の児童が毎年「源流探検」や「河口観察」を共同で行い、交流を深めるなど源流域の縁が今も続いている。
(西郷村商工観光課(電)0248・25・1111) |
自然と人間の関係 再考の機会に |
高田 雅雄(たかだ・まさお)さん/環境省自然公園指導員
阿武隈川源流の自然を生かして、子どもたちに環境を学んでもらおうと自然体験学習などを指導しています。源流周辺は環境学習に最適で、人間にとって自然がいかに大切なものかを教えてくれます。景観も素晴らしく、コバルトブルーに光る川面に子どもたちも目を丸くして驚きの声を上げています。
残念なことに東日本大震災と、その年の10月に降った大雨の影響で地形が変わってしまいました。土砂が流れ込み滝つぼを埋め、川の流れをせき止めたため、長年親しまれてきた源流域の姿が失われてしまいました。
子どもたちには、このような時期だからこそ地元の自然に関心を持ってほしいです。ブナ林や希少な草花なども生育している源流域は樹木がスポンジ代わりとなり、大雨が降っても下流に大量の水が流れ込まないよう、ダムの役割を果たしています。人が自然に生かされていることを見つめ直し、地域の財産を自分たちで守っていく意識を育ててほしいと思います。
|
自然の営み
|
|
樹高35メートル、樹齢300年を超える霊験あらたかな神木「剣桂」。周囲には原生林や希少な草花なども自生し、自然の営みが脈々と続いている
|
|
福島民友新聞社は、ふくしま復興支援プロジェクトの一環として、2012(平成24)年10月から13年5月まで、「ふる里の誇り ふたたび 福島遺産 百選 未来への歩み」を連載しました。
「福島遺産 百選」は、県内それぞれの地域で「ふる里の誇り」として守り継がれてきた有形無形の宝を後世に残していこうと、福島民友新聞社が07年に県内外に呼びかけ、選定しました。
しかし、計120件のうち31件の遺産が東日本大震災で被災しました。本プロジェクトは、あらためて地域の素晴らしい宝を再認識することで県民一人一人の誇りを取り戻し、「心の復興」につなげていくことを目的としたものです。 |
|
ふくしまが誇る美しい自然、歴史、文化 |
地域の宝を復興の力に |
震災に耐えて |
東日本大震災に耐え、被害を免れた福島遺産もあります。これらは地域で県民に勇気と希望を与え続けています。
滝八幡の三十三観音磨崖仏群
(矢吹町)
|
|
矢吹町滝八幡の隈戸川に沿った約10メートルの崖に、薬師如来や阿弥陀如来、地蔵菩薩(ぼさつ)など37体の仏像がほぼ一列に並んで彫られている。仏像の高さは40〜60センチで、大きさや作風から、18世紀後半の三十三観音信仰隆盛期に彫刻されたものではないかとされる。(矢吹町教育委員会生涯学習課総務係(電)0248・42・2869)
|
駒止湿原(南会津町、昭和村)
|
|
標高1100メートルで、南会津町と昭和村の境に位置する。大谷地、白樺谷地など十数カ所の湿原群からなり、周囲はブナ林で覆われている。多種多様な植生が見られ、春はミズバショウ、初夏はワタスゲ、夏はニッコウキスゲが色鮮やかに咲き誇り、秋は一面の草紅葉が映える。(南会津町観光物産協会(電)0241・62・3000)
|
田子倉湖(只見町)
|
|
尾瀬を源流とする只見川の本流をせき止めたダム湖で、越後三山只見国定公園の一部。5億立方メートルの膨大な水を蓄え、田子倉発電所が生み出す電気は首都圏に送られ、日本経済を支えている。また、新緑や紅葉など、原生的な自然風景は観光客からの人気が高い。(只見町観光まちづくり協会(電)0241・82・5250)
|
|
|
民友携帯サイト
右のコードを読み取り、表示されたURLでアクセスできます。
|
|
|
|