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久米正雄記念館
(郡山市)
才人たち集った通称「文士の館」
久米正雄記念館
安積開拓の中心となった開成山の地に移築復元された久米正雄記念館。大正時代を代表する文士の一端を垣間見ることができる
 芥川龍之介、菊池寛らとともに第三次「新思潮」を発刊し、小説家、俳人、劇作家などとして多彩な才能を発揮した久米正雄。安積開拓によって急速に発展した郡山で少年時代を過ごし、郡山の風土の中ではぐくまれた文学者の一人だ。
 1891(明治24)年、徳川家直参の出身で教育家だった父由太郎と母幸子の二男として長野県上田で誕生。6歳のときに父親が自殺するという悲劇に見舞われ、母親の実家・立岩一郎家があった旧安積郡桑野村開成山に移り住んだ。
 久米文学の歴史と素顔を伝える久米正雄記念館は、開成山の一角に整備された「こおりやま文学の森資料館」(中野英二館長)の敷地内にある。久米が1930(昭和5)年に当時の活動拠点だった鎌倉に建てた自宅を2000(平成12)年2月、ゆかりの地に移築・復元した。
 木造2階建ての邸宅は、正面が白壁の洋風、裏側は純和風という和洋折衷の外観で、当時珍しかったバルコニーや水洗トイレを備えている。間取りや細かい設備などに大正時代を代表する文豪らしいこだわりが垣間見える。
 寂しがりやでにぎやかなことを好んだ久米は、自宅で文士や芸術家との交流を楽しんだ。玄関を入るとすぐ右側にある応接室。ボタンを押して来客数を知らせる「来客通知システム」というユニークな仕掛けは、「文士の館」と称された久米邸のにぎわいを物語る。
 その奥には、芥川や菊池、川端康成などの文豪が集い、マージャンや文芸談議に花を咲かせたという和室。2階には書斎と寝室があり、窓からは四季折々の花が彩る庭園や開成山の森を望むことができる。
 久米の一人息子の妻で、移築される直前まで久米邸に住んでいた久米和子さん(記念館名誉館長)は「多彩な人が常に出入りする開放的な家だった」と振り返る。現在も記念館として多くの文芸愛好家が訪れ、久米の人柄をしのんでいる。
 11月23日は久米の誕生日。玄関に入ると、口癖だった「まあ、上がりたまえ」という久米の朗らかな声が聞こえてくるようだ。 
 >>> 行ってみよう
 JR郡山駅からバスで約15分、「総合体育館前」で下車し、徒歩1分。久米正雄記念館は「こおりやま文学の森資料館」の敷地内にあり、観覧料は両館共通で学生130円、一般210円。開館時間は午前10時から午後5時まで。毎週月曜日休館。電話は024・991・7610。
<34> 2003.11.21
 

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