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庭坂発電所跡
(福島市)
県都に初の電灯、この地から送電
庭坂発電所跡
県内で初めて発電を行った庭坂発電所跡。雑草に覆われているが、イロハカエデの下の記念碑が県内初の発電所の存在を伝えている
 水力、火力、原子力、地熱の各種発電所が立地する本県は全国有数の発電県。1895(明治28)年11月26日は、本県の発電が第一歩をしるした記念すべき日だ。
 「福島電灯」が福島市西部を流れる天戸川で進めていた庭坂発電所の工事完成検査の検査証が同日下り、28日までの3日間、試験点灯が行われた。福島市の中心部に県内初となる近代化の灯がともった。
 当時契約していたのは453灯にすぎず、同市北町に設置された街灯周辺は、当時の新聞に「さながら不夜城と化し」と報道された。
同社は需要増で電力が不足したことから、1904年には庭坂第二発電所を建設。庭坂発電所は第一発電所となった。両発電所は東北電力に引き継がれたが、運転経費の高騰などで1975(昭和50)年10月31日に廃止された。
 旧庭坂発電所跡は整地され、東北電力が建てた記念碑や石積みしか残っていない。付近に集落はなく時折、猿やクマ、カモシカが顔を出す。
 庭坂発電所が再び脚光を浴びたのは、自然(クリーン)エネルギーが重要視されるようになった80年代のこと。水力エネルギーの開発を強力に推進するために創設された国の中小水力発電開発費補助制度をもとに、県企業局が4番目の県営水力発電所として01年3月、旧庭坂発電所から約500メートル下流に建設した。現在、1500キロワット(1900戸分)を発電している。
 東北電力当時、常駐していた同社員は社報で「雪の中の巡視は大変だった。大雪の時には郵便配達の人も来なかったりして、人恋しくなった」と振り返る。現在、保守管理は無人化されている。
 その県営発電にも時代の流れが否応なく押し寄せた。企業局は、電力自由化に伴う事業見直しで、04年度を目途に発電施設の譲渡を計画する。
 建設―廃止―復活―譲渡という流れをたどりつつある庭坂発電所は、電力に対する期待と自由化の流れなどエネルギーを取り巻く環境の変化を象徴している。
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 福島市西部を走る福島西道路のテレビユー福島交差点から高湯街道を西に向かい、車で約10分。旧庭坂発電所は県営庭坂発電所の門から入るが、無人化に伴い、発電所施設は施錠されている。連絡先は県企業局業務管理グループ(電話024・521・7578)。
<35> 2003.11.28
 

福島民友新聞社
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