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こころに残す ふくしまの風景
松川浦
(相馬市)
朝夕の美しさが歌や絵の題材に
松川浦
朝焼けが潮面をオレンジ色に染め、のり棚が幾何学模様を描く。見る者を魅了し、古くから歌や絵の題材となった松川浦
 相馬市内を流れる宇多川の河口に開けた周囲28キロ、海域面積738ヘクタールの静かな潟湖(せきこ)で、日本百景の1つにも選ばれた県立自然公園。
 万葉集の東歌に「松が浦に さわゑうら立ち まひとごと 思ほすなもろ 我がもほのすも」と詠まれた、とされる名勝地で、年間約130万人が訪れる。
 古くは相馬中村藩のリゾート地として知られた。朝日が湖面に乱反射し、オレンジ色に染まる夕方の浦の美しさは見る人を魅了し、多くの歌や絵の題材となった。
 松川浦が広く全国に紹介されたのは元禄時代までさかのぼる。文人大名の誉れの高い5代藩主昌胤が藩の連歌師猪苗代玄盛に命じて、松川浦の名勝地12カ所を選び、松川十二景と名付けて描かせた。また、玄盛の原画を基に当時の狩野派の絵師たちが描いて、昌胤が東山天皇に願い出、公卿の詠歌を付けたのが「松川十二景和歌」で、以後、全国に知れ渡った。明治時代には、俳人河東碧梧桐や巌谷小波なども訪れている。
 現在、万葉集や松川十二景に詠まれた地には歌碑など文学碑が建てられ、歌へのロマンをかきたてる。2003年6月には、文化庁の文化的景観重要地域として全国180カ所の1つにも選定された。
 また、松川浦は豊富な魚介類をはぐくむ天然の養殖場として、多くの恩恵を相馬人にもたらした。明治からノリの産地として県内外で有名で、最盛期には湖面に作られたのり棚が美しい幾何学模様を楽しませてくれる。
 相馬市文化財保護審議会長で郷土史家の大迫徳行さんは「松川浦は、古くから芸術文化、産業、信仰の象徴で、相馬の風土をはぐくんできた心の故郷。希少な植物も生育し、守っていかなければならない財産」と熱い思いを寄せる。
 >>> 行ってみよう
 JR常磐線の相馬駅下車、タクシーで約15分。福島交通バスでは、駅近くの営業所から松川浦原釜循環線で「船越」下車、徒歩で松川浦大橋を渡り約20分。車の場合、国道6号の塚ノ町交差点から県道相馬亘理線で約6キロ。
<47> 2004.03.12
 

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