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こころに残す ふくしまの風景
旧県尋常中学校本館
(郡山市)
115年の歴史経て創建時の姿残す
旧県尋常中学校本館
県立安積高校の正門を通ると現れる旧県尋常中学校本館。講堂は今でも現役生の集会などに利用されている
 1889(明治22)年3月、郡山市の発展の礎となった安積開拓の地に本県中等教育の中枢として創建され、朝河貫一、今泉亀撤、久米正雄など歴史に名を残す優れた人材を多く輩出してきた旧県尋常中学校(現・県立安積高校)。「質実剛健」の校訓の下、若者たちが文武に情熱を注いだ伝統ある学舎(まなびや)は、現在も郡山市開成の同校敷地内に残る。
 1977(昭和52)年に国の重要文化財に指定され、115年の歴史を経た今でも創建されたままの場所、姿で保存されている尋常中学校は、全国でもほかに例がない貴重な文化財とされている。
 旧県尋常中学校は、1884年に福島中学校として福島に開校。86年の学校令によって県尋常中学校に改称され、89年に現在地(当時・安積郡桑野村)に新築移転された。
 周辺住民の同校に対する歓迎ぶりは熱く、農民が所有地を学校用地として寄付し、建設のための労働力も提供したという。「当時では県内唯一の中等教育機関。地元住民の情熱が誘致を実現させ、その開拓精神が安積高の校風の基礎になっている」。1952年度卒で安積高教員も務めた仲村哲郎さんは当時の地域住民の思いをしのぶ。
 当時は珍しかった鹿鳴館風の華麗な洋風建築は「桑野御殿」と称され、地域の誇りとされた。正面玄関ポーチには八角形の板石が敷き詰められ、八角の柱を八角形に配置。2階正面バルコニーや各部屋の上げ下げ窓、装飾小壁、講堂天井のろうそく用の大きなシャンデリアなど、至るところに優れた技術が光る。
 しかし、生徒数の増加や建物の老朽化など、時代の変遷とともに建物解体の話が持ち上がった。73年3月、教育機能の新校舎への全面移転とともに、同窓生や地域住民らが旧本館保存会を発足。県や国への要望活動が実を結び、解体の危機を乗り越えてきた。
 84年の創立100周年を機に安積歴史博物館を開設。数千点の展示資料とともに板張りの廊下や当時のままの机が本県教育の歩みを今に伝えている。
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 JR郡山駅から、福島交通バスで20分、安積高校前下車。東北自動車道郡山インターチェンジから約15分。開館時間は午前9時から午後4時。月曜日、祝日の翌日、年末年始は休館。問い合わせは安積歴史博物館(電話 024・938・0778)。
<49> 2004.03.26
 

福島民友新聞社
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