【みんゆう県民大賞 誉れ高く〈2〉】 集大成へ連係に磨き

 
東京五輪金メダルへ挑戦を続ける東野さん(右)と渡辺さん=2020年12月の全日本総合選手権、町田市立総合体育館

■スポーツ賞 バド東野・渡辺組

 第31回みんゆう県民大賞に選ばれた芸術文化賞の音楽グループGReeeeN(グリーン)、スポーツ賞のバドミントン混合ダブルスの東野有紗さん(24)と渡辺勇大さん(23)、ふるさと創生賞の作家柳美里さん(52)、福島医大教授坪倉正治さん(39)。復興へ歩む県民に勇気を与えたそれぞれの活動を4回にわたって紹介する。

第二の故郷へ恩返し

 富岡一中で出会い、ペアを結成したバドミントン混合ダブルスの東野さんと渡辺さんは、日本を代表する混合ペアとして活躍する。世界ランキングは5位(4日現在)で、出場が確実視される東京五輪で金メダルを目指している。

 2人が初めてペアを結成したのは、2012(平成24)年にインドネシアで開かれたジュニアの国際大会。決まったペアの相手がいなかった中学3年の東野さんと、腰の故障で本調子ではなかった1学年後輩の渡辺さんがペアを組むこととなった。

 「余り者同士」と思われた急造ペアではあったが、ライバルペアを次々と撃破し、3位に入った。この時、東野さんは「ほとんどしゃべらなくてもスムーズに動きが合った」と、渡辺さんとのペアに運命的なものを感じていた。

 富岡高に進学後もペアを継続し、14年には世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得した。また同年の全国高校総体では、それぞれ個人・団体戦のメンバーとして出場し、男女アベック優勝に大きく貢献した。卒業後、東野さんは実業団の日本ユニシスへ進んだ。東野さんからの熱心な後押しもあって、1年後に渡辺さんも日本ユニシス入りした。

 前衛を女子、後衛を男子が担うことの多い混合ダブルスの戦いの中で、東野さんと渡辺さんはあうんの呼吸で前衛と後衛を入れ替えながら、ラリーを制する。男子に劣らない強いスマッシュと積極的な攻撃が持ち味の東野さん、多彩なショットと豊富な運動量で広範囲をカバーする渡辺さんだからこそできる戦い方だ。

 社会人となってますます連係の成熟度を増した2人は、17年の全日本総合選手権で初優勝。翌年には100年を超える歴史を誇る全英オープンで日本勢初優勝を飾り、世界トップペアへと駆け上がった。21年の全英オープンでは2度目の優勝、渡辺さんは男子ダブルスとの2冠を達成した。

 毎年3月に開かれる全英オープンの際、2人は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶や本県への思いなどについて報道陣から問われることが多い。

 被災したのは、東野さんが中学2年、渡辺さんが中学1年の終わりのことだった。東野さんは、車中泊をしながら避難した原発事故の恐怖を鮮明に覚えている。渡辺さんは、富岡町と避難後の拠点となった猪苗代町で過ごした6年間を「(福島は)第二の故郷。人間力を大きく育ててくれた場所」と振り返る。

 2人は、本県で競技に汗を流した日々を思い起こしながら、東京五輪での勝利に向けて練習を続けている。「僕らにはバドミントンしかない。バドミントンを続けることで勇気と笑顔を届けたい」と声をそろえる。

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 渡辺勇大(わたなべ・ゆうた) 東京都出身。富岡高卒。2016年、日本ユニシス入社。遠藤大由(日本ユニシス)と組む男子ダブルスで全英オープン2連覇を果たすなど、混合との2種目を戦う。23歳

 東野有紗(ひがしの・ありさ) 北海道出身。富岡高卒。2015年、日本ユニシス入社。渡辺と組む混合ダブルスで全日本総合選手権4連覇中。19年世界選手権は混合として日本勢初の銅メダル獲得。24歳