【誉れ高く】スポーツ賞・若隆景関 自分の相撲貫き賜杯

 
優勝後、地元福島市に初めて凱旋し、母校の相撲部員から花束を受けた若隆景関(左から2人目)=4月9日

 第32回みんゆう県民大賞に選ばれた芸術文化賞の前ふくしま海洋科学館理事長・アクアマリンふくしま館長の安部義孝さん(81)、スポーツ賞の関脇若隆景関(27)=荒汐部屋、福島市出身、ふるさと創生賞の前県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター副所長の鈴木賢二さん(60)。各分野で活躍し、県民に勇気を与えたそれぞれの活動を3回にわたって紹介する。

 福島県力士快挙3人目

 3月の大相撲春場所で初優勝を果たした若隆景関。千秋楽に福島市のJR福島駅西口駅前広場の大型ビジョン前で行われたパブリックビューイングでは、集まった200人以上が優勝決定戦の勝利に沸いた。大相撲界に新たな歴史を刻んだ優勝は、県民に勇気と希望を与えた。

 本県出身力士の優勝は時津山、栃東(初代)に続いて3人目で、栃東の1972(昭和47)年初場所以来50年ぶり。新関脇の優勝は36年夏場所の双葉山以来86年ぶりという快挙を成し遂げた。祖父は元小結若葉山、父は元幕下力士若信夫の大波政志さんという相撲一家の三男に生まれた。小学1年から相撲を始め、3歳年上の長男若隆元、年子の次兄若元春と共に日々の稽古に励んだ。

 小学生時代は体も小さく、大きな大会で全く勝てなかったという。誰よりも稽古に励み、中学、高校と成長を続けた。すると、結果も少しずつ出始め、大学4年時には全国学生選手権個人で準優勝した。その後は大相撲への道を選び、2人の兄が所属する荒汐部屋に入門。さらに自分の相撲に磨きをかけ、2017年の春場所で初土俵を踏んだ。19年の九州場所で新入幕を果たし、初土俵から約2年7カ月のスピード出世で、戦後7人目の本県出身幕内力士となった。

 今年の初場所を9勝6敗で勝ち越し、過去最高位の関脇に昇進して臨んだ春場所。おっつけを武器とした押し相撲を貫いた。4日目に霧馬山に敗れて1敗目を喫したたものの、その後は8連勝。13日目に東洋大の2学年先輩である御嶽海に寄り切られ、2敗に後退したが千秋楽まで優勝の可能性を残した。

 迎えた千秋楽は、2敗で並ぶ前頭7枚目の高安が敗れ、若隆景関は結びの一番で勝てば優勝だったが、大関正代に寄り切られた。勝負は2人の優勝決定戦にまでもつれた。優勝決定戦では土俵際まで追い込まれるが、驚異の粘り強さを発揮して逆転し、賜杯を手にした。

 優勝後の4月9日には地元福島市に凱旋(がいせん)。春場所中に大きな地震が襲った本県に対し「活躍する姿を見せ、福島を元気づけられたらという思いで相撲を取った」と振り返った。市役所では母校の相撲部員らから祝福を受け「皆さんの応援があって活躍することができた。これからも下からの攻めを貫いていく」とさらなる精進を誓った。

 関脇で優勝を飾り、一躍大関候補に名乗りを上げ、開催中の夏場所で注目を浴びている。本県出身の新大関が誕生すれば、1881(明治14)年の若島以来2人目。若隆景関は「一日一番自分の相撲を貫き、精いっぱい取り組みたい」と決意を口にした。

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 わかたかかげ 福島市出身。学法福島高、東洋大卒。小学1年で相撲を始め東洋大4年時に全国学生選手権個人で準優勝。その後、2人の兄が所属する荒汐部屋に入門。2017年の春場所で初土俵を踏み、新関脇として臨んだ今年3月の春場所で初優勝した。27歳。