防弾チョッキのハト、消費文化皮肉る作品...バンクシーが世界見せる

 
作品を楽しむ来場者でにぎわう「バンクシーって誰?展」=29日午前、郡山市・ビッグパレットふくしま

 郡山市のビッグパレットふくしまで29日に開幕した「バンクシーって誰?展」は、開場前から長蛇の列ができるなど、来場者の期待の高さが伝わってきた。来場者らはバンクシーの代表作を実際のスケール感で体感できる展示会を堪能した。

 開場する1時間前から先頭で並んでいたのは、いわき市の無職越條千絵子さん(72)とパート野木真澄さん(67)。東北で初めてバンクシー展が開かれるのを知り、来場を決めたという。

 野木さんは、イスラエルの軍事攻撃を受けたガザ地区北部に描かれたネコの壁画を見て「ネコがボールではなく、鉄の塊で遊ぶような姿が印象的だった。現地まで出向いて描くバンクシーの行動力に驚いた」と感銘を受けた様子。越條さんは「戦争を知らない子どもたちにバンクシーの作品を見てもらいたい」と話した。

 須賀川市の会社員矢吹克人さん(55)は「実際の現場の雰囲気が出ていて見応えがあり、どこに作品が隠れているんだろうと探すのが楽しかった」と満足げだ。米国の消費文化を皮肉った作品などに目を奪われたという。「世の中の嫌な部分を捉えていて、バンクシーの感性はすごい」と感心した。

 パレスチナのベツレヘム市街の壁に描かれた、防弾チョッキを着けたハトの絵に見入ったのは、会津若松市の会社員本田菜緒さん(39)。「現在のロシアとウクライナの状況が重なった。今回の展示会は、世界の動きについてアンテナが高くなる機会になると思う」と話した。

 ビッグパレット復活の一歩

 会場のビッグパレットふくしまはコロナ禍に加え、昨年2月と今年3月の本県沖を震源とする地震で影響を受けた。橋本武士館長(60)は「再スタートのシンボルになれば」と久しぶりの大型企画に期待する。

 同施設はコロナの影響でイベントの中止や延期が相次ぐ中、昨年2月の地震でも大きな被害を受け、全面再開できたのは同10月だった。さらに今年3月の地震でも再度休館を余儀なくされたが、4月11日に1、2階が復旧したことで、今回の展示会は予定通り開くことができた。橋本館長は「ほっとした」と胸中を明かす。

 展示会は東北唯一の開催だけに、他県からも来場が見込まれる。館内に観光物産コーナーを初めて開設。開催期間中の土、日曜日、祝日を中心に、本県ならではの日本酒や菓子を販売することにした。「福島のファンを増やすのも当館の役割の一つ。存在感を示していきたい」と力を込めた。

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 「バンクシーって誰?展」 開館は午前9時30分~午後5時(入場は同4時30分まで)。当日券は、一般が平日1800円、土、日曜日、祝日2000円、高校・大学・専門学校生は平日1600円、土、日曜日、祝日1800円、小・中学生は平日1100円、土、日曜日、祝日1300円。8月24日まで。問い合わせは実行委事務局(電話024・924・1100、平日午前9時30分~午後5時30分)へ。