ブリューゲル展【机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇】美しき病を繊細に描く

 
ヤン・ブリューゲル1世、ヤン・ブリューゲル2世「机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」(1615~20年ごろ Private Collection)

 ピーテル・ブリューゲル1世の息子に当たるヤン・ブリューゲル1世は、花の静物画を描く先駆的画家として17世紀半ばに人気を誇りました。

 この頃、貿易によってヨーロッパに新種の植物がもたらされると、貴族を中心に栽培ブームが巻き起こり、園芸愛好熱と相まって花を題材にした静物画が求められるようになりました。「花のブリューゲル」の異名を取ったヤン1世やその息子のヤン2世は、生気に満ちた優美な画風で一世を風靡(ふうび)し、花の静物画の発展にも大きく貢献しています。
 本作品には、チューリップとバラを中心に、スイセン、アイリス、ニゲラなどさまざまな花が描かれています。おそらく写生ではなく、植物画や習作を基にしながら自由に構成したものでしょう。けれどもその一輪一輪は、繊細な筆致と豊かな色彩でみずみずしく捉えられ、香気さえ感じさせるほどです。

 当時、投機の対象にもなるほど大流行したチューリップは、花の静物画において主役級に扱われました。中でも珍重されたしま模様は品種の特徴ではなく、ウイルス性の病が原因の美しき症状だったといわれています。