ブリューゲル展【野外での婚礼の踊り】素朴な生き方への親愛

 
ピーテル・ブリューゲル2世「野外での婚礼の踊り」(1610年ごろ Private Collection)

 農民たちの姿は、17世紀のフランドル絵画で最も人気のあった主題のひとつです。ピーテル・ブリューゲル1世は農民たちの中にまぎれこみ、彼らの日常の姿をありのままに描きました。息子のピーテル2世とヤン1世も、父の主題を継承しています。

 この展覧会の目玉のひとつ、「野外での婚礼の踊り」はピーテル2世の傑作です。踊りに興じ、バグパイプを奏でる人物が画面の半分を占め、奥の方には多くの列席者が細かく描かれています。では、婚礼の主役である花嫁はどこにいるのでしょうか。右手奥のテーブル正面に座り、他の女性のように頭に布を巻かず、長い髪を垂らしている女性です。その表情はどこか物憂げで、かえってその他大勢の人々の方が楽しそうに見えます。

 多くの農民の主題には、粗野で無知な存在として風刺する意図が込められていました。しかし、勤勉な日々の生活や、にぎやかな祭りの場面を表情豊かに描いたブリューゲル一族の作品からは、彼らの素朴な生きざまへの親愛のまなざしが感じ取れます。本能のままに遊興することへの批判か、人間本来の姿への讃美(さんび)か、みなさんならどちらに見えるでしょうか。