【MEET THE 仏像】(4)お笑いタレント・みほとけさん

 

「ずたずたに打ちひしがれても立ち上がるヒーローのような生命力」 

◆徳一の魂が宿っている

「仏像好きが高じて、お笑いタレントに転身したアイドルがいる」―。

 情報を得た本紙取材班は、待ち合わせ先の東京・下目黒の五百羅漢寺に向かった。現れたのは、紫色の作務衣(さむえ)を着たみほとけさん。仏像のコスプレ道具を持参し「仏像を見上げると、まるで大きな生き物のような力が急に出てきて、躍動感を体感できる」とあふれんばかりの仏像愛を披露した。

―「仏女(ぶつじょ)」(仏像好きの女性)になったきっかけは。

 「親が地元(神奈川県鎌倉市)の観光協会に勤務し、週末に鎌倉のお寺の見どころを調べていました。小学校低学年の頃から一緒にお寺巡りについていったのが仏像好きになったきっかけです。もともとは信仰心からお参りするのではなく、観光を勉強する中で『仏像は面白いな』という目で見ていました」

―仏像には美術品の観点もあります。

 「かっこいい、大きくて強そう、かわいい、きれい。仏像からは本当にいろいろな印象を受けます。一体ごとにバラエティーに富んでいるところが好きですね」

―ミス鎌倉、アイドルとして活動していて、どうして仏女を前面に出していくようになったのですか。

 「ミス鎌倉で仏像に目覚めたんですよ。大学在学中にアイドル活動と並行してミス鎌倉になり、鎌倉・建長寺(けんちょうじ)で大法要を見たときに『こんなに大迫力の世界が仏教には広がっているんだな』と、お寺にさらに心を奪われましたね。本尊の『地蔵菩薩坐像(ぼさつざぞう)』の素晴らしさに改めて感銘を受けました。1年間、ミス鎌倉を務めた後、お寺にまつわる活動を始めたのですが『仏像に一番近いアイドル』と『みほとけ』を名乗るようになりました。今はアイドルも終わり『みほとけ』だけが残ってしまいました」

―お笑いの世界に飛び込みましたが、目標は。

 「お笑いの賞レースで1位を取りたいです。タレント業、芸人業を成長させることが仏像を広めるきっかけにつながると思います。影響力、知名度を上げるためにお笑いを頑張ります」

―最も心に残っている仏像は何ですか。

 「やはり京都・六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)の『空也上人(くうやしょうにん)立像』が私の恋人なんです。『口から何が出ているの?』と見た目に驚かされますけれど、それを不思議に感じず、本物と信じ込ませるほどのリアリティーとSF感、尊さを兼ね備えています。仏女は好きな仏像に恋に落ちるといいますが、私にとって『空也上人立像』は目を閉じると脳裏に姿が浮かぶよう。これって恋でしょう」

―福島復興祈念展「興福寺と会津~徳一(とくいつ)がつないだ西と東」にお越しいただきました。気に入った作品はありましたか。

 「興福寺の国宝『四天王立像 多聞天(たもんてん)』ですね。通常の展示では、奥から手前に向かって仏像が立体的に配置されていると、奥の仏像は全体が見えません。でも、今回の展覧会は貴重な仏像を360度、アクリルケースなしで間近に見られるのが興奮ポイント。普段は見えない多聞天の足元をのぞき込んだら、邪鬼が踏み付けられていて、しかもロン毛(長髪)だったんですよ。全く予想だにしない見た目に興奮を覚えました」

―会津の仏像の印象は。

 「武骨でとても良かったです。『これが会津のアイデンティティーか』と思い知らされました。奈良では国のお金と人を使って仏像を守ってきました。これに対し、会津では仏教を伝えた高僧・徳一が自分で集団をつくり上げ、一族だけで仏像を守ってきました。仏像の表現力や残り方は両者に圧倒的な差があります。それでも1200年前、自分の仏教を信じてただ一人、東北へ向かった徳一のパワーが会津の仏像には宿っています。ずたずたに打ちひしがれても立ち上がるヒーローのような生命力を感じます」

―仏像について詳しくない人はどのように展覧会を楽しめばよいでしょうか。

 「仏像の下にかがんで見上げてください。まるで大きな生き物のように仏像から急に力が出てきて、躍動感を体感できます。興福寺の仏像は素晴らしい技術なので、仏像に見守られている感じと、にらまれている感じを同時に受けられて特別な知識がなくても面白いと思います。興味を持ったら調べればいい。まずは体感するのが一番ですね」

―県民にメッセージを。

 「1200年前から福島、会津はすごいんです。気付いていないかもしれませんが、どこにも負けない素晴らしいもの、価値あるものを持っています。今回の展覧会で福島が誇る宝物に会いに来てほしいなと思います」

 みほとけ 本名野口実穂。神奈川県鎌倉市出身。慶大看護医療学部卒。2015年、アイドルグループ「WenDee」に加入。16年、ミス鎌倉。「仏像に一番近いアイドル」をキャッチフレーズに、短文投稿サイト「ツイッター」に仏像の物まね画像を投稿して話題を呼ぶ。24歳。    ツイッターとインスタグラムのアカウント名は@mihotoke_chan

「興福寺と会津~徳一がつないだ西と東」ホームページへ