福島舞台に書き続ける 作家・相場英雄さん、最新作「血の雫」

 
「県内の情景描写にも自信があるので注目してほしい」と話す相場英雄さん=福島民友新聞社

 作家の相場英雄さん(51)が社会派ミステリーの最新作「血の雫(しずく)」(新潮社)を刊行した。都内で発生した連続殺人事件を描くが、物語の後半は県内が主な舞台になる。「ネット社会の危うさをテーマにしつつも、当初から福島のことを書くつもりだった」と相場さんは話す。

 ネットを駆使する殺人犯にネット恐怖症の元敏腕刑事が挑むストーリーで、SNS(会員制交流サイト)の闇を描く。地道な捜査を続ける刑事の執念と、ネット社会に踏みにじられた人々の痛みが胸に迫る。

◆「福島弁」キーワードに

 相場さんは「本の帯による情報だけで『ああネットの話ね』と読み始める読者は、途中からびっくりすると思う」と語る。「福島の話を書きたくてもノンフィクションの本はなかなか企画が通りにくい時代だ。現代的なテーマに福島の話を盛り込んで、小説として福島の今を表現しようと思った」

 物語の中盤、唐突に「福島の桃」や「福島弁」がキーワードに浮上する。刑事たちは手掛かりを求め、県内へと向かう。  「9割はフィクションだけど、見聞きした本当の部分が1割はある。県内からの賛否は当然あると思うし、批判も覚悟の上だった。ただし、それ以上に全国の読者に県内の現状を知ってもらいたいという思いがあった」

 相場さんは新潟県三条市出身。ドライブ好きの父親に連れられ、子どもの頃から県内によく来ていたという。

 作家デビュー後も東北が舞台の旅情ミステリー「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎」をシリーズで手掛け、さらに足を運ぶようになった。シリーズ第1弾「奥会津三泣き 因習の殺意」(2009年)は会津地方を舞台にしている。

 「私自身が震災前の福島の姿を熟知している。だからこそ今回のようなテーマを書きたかった」  現在も年に数回は県内に来て、飯坂温泉のなじみの旅館に宿泊し、南相馬市小高区の老舗ラーメン店「双葉食堂」に通う。

 「福島は私にとって大事な場所。今後も福島を舞台にした小説を書き続けようと思う」

 あいば・ひでお 1967年新潟県生まれ。時事通信記者を経て、2005年「デフォルト 債務不履行」で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。12年、BSE問題を題材にした「震える牛」がベストセラーに。