阿武隈高原中部県立自然公園に指定されている五十人山は、葛尾村と田村市都路町にまたがる阿武隈山系有数の名勝地で、小学校の遠足コースにもなるなど古くから里山としても地域の人々から愛されてきた。山開きが行われる5月中旬には、自生のヤマツツジやスズランなど季節の花々が山頂付近に咲き誇る。
「五十人山」の名の由来は、延暦年間、坂上田村麻呂が蝦夷平定の際、山頂の大石に侍従50人を座らせて戦略を練ったという伝説から。現在も山頂には「坂上田村麻呂之霊」と刻印された「五十人石」があり、地域住民に守られている。
登山口は葛尾村の菅ノ又と湯ノ平、田村市都路町の持藤田の3カ所で、県内外から大勢の登山者が訪れる。菅ノ又登山口には大型バスにも対応した駐車場が整備され、中腹にはあずまやも設置、シーズンには隣県からの登山グループが山頂を目指す姿も見られる。
登山道は急傾斜が少なく、初心者でも山野草を観賞しながらゆったり登ることができる。芝生で覆われた広大な山頂からの景観は素晴らしく、吾妻連峰、阿武隈高地の大小の山々のほか、東には太平洋が望める。
下山した登山者にお薦めの観光スポットは葛尾村の「葛尾大尽屋敷跡公園」。中世から11代にわたり製鉄や山林伐採、塩、酒造などの経営活動で栄華を誇った松本家の邸宅跡で、約2ヘクタールの敷地内には石垣、近江八景をかたどった池、磨崖仏(まがいぶつ)、京桜などが往時をしのばせている。
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