約1200年前の平安時代初期に銀が発見され、日本3大銀山の一つと称されていた半田山。自然公園として整備されている半田沼周辺は標高420メートルに位置することから桜の開花が遅く、ゴールデンウイークに満開を迎えるシダレザクラなどを楽しもうと毎年、大勢の家族連れが集まる。
シンボル半田沼は約100年前、大規模な陥没地滑りが起き出現した。これ以前にも沼はあり、源義経が平泉に行く途中で金銀を背負った赤牛が驚き狂って沼に入り、それが銀山の鉱物となったという言い伝えや、あるじとなった赤牛に嫁いだ娘にまつわる雨ごいの伝説も残る。一説では、金属同士を接着する「はんだ付け」という言葉も半田銀山から生まれたといわれている。
半田山キャンプ場から遊歩道でスギ林を越えてアカマツの林の中を進むと、一度、車道に出て登山口駐車場に至る。立ち止まって新緑に染まった山の中で深く息を吸い込むと、普段の生活から離れたことを実感し、スッと体が軽くなった。
登山口から頂上までは、ゆっくり歩いても約40分でたどり着く。山道の木のすき間から時折見える景色は見応えがあり、緑の中でひときわ存在感を示す半田沼とともに、中通り北東部を一望できる。
ふもとの桑折町谷地地区には、県や同町が復元した奥州、羽州街道の分岐点・桑折宿追分がある。山を下りた後に追分の休憩所に腰を下ろすと、旅人や行商人が行き交う江戸時代に迷い込んだ気がした。
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