「会津のマッターホルン」の異名を取る蒲生岳。天をさすようにとがった山容、雪で削られ露出した岩石が荒々しい。初心者には、ガイド付きの登山が安全。
南斜面の久保登山コースは、山頂を真上に見ながら急斜面をひたすら登る険しい道。登山口付近の「カタクリ公園」を抜けると、一気に急こう配になる。前かがみになって地面に手をつきながら登っていく。「牛も千里、馬も千里。ゆっくり行ったほうがいい」。地元ガイドの五十嵐欣也さん(74)のアドバイス。途中で何度も腰を下ろし、したたる汗をぬぐい、上がった息を整える。
「夫婦松」を過ぎた辺りから岩場が多くなる。行く手を遮る巨岩を、足元に注意しながらロープを頼りに移動する。岩に大きな横穴があいた「鼻毛通し」までくれば山頂は近い。
やっと到達した山頂は360度の大パノラマ。登りの苦しさを吹き飛ばす絶景で、会津朝日岳、浅草岳など奥会津の山々を見渡すことができる。眼下には山あいに大きくS字を描く只見川。深緑の水面に山や空を映す姿が美しい。
五十嵐さんは、下山ルートに北尾根から西斜面を通る小蒲生登山コースを勧める。頂上付近の岩場を除けば比較的緩やかで、ブナなどの広葉樹林を抜ける。野鳥のさえずりや、ブナの枝葉を揺らす風が心地よい。
下山後は久保登山口前の「上原清水」でのどを潤す登山者が多い。踏破した蒲生岳を見上げながら飲む清水は格別のうまさだ。
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