8月の「尾瀬国立公園」誕生で、新たに国立公園区域に指定された本県を代表する名峰。なだらかな稜線(りょうせん)を描く山頂付近に広々とした湿原があり、点在する数々の池塘(ちとう)は水面に澄んだ空を映す。草紅葉の季節を迎え、夏を彩った緑のじゅうたんが黄やオレンジへと色を変え、登山者に秋の深まりを知らせる。
林道沿いにある滝沢登山口から山頂までは約3時間半。ブナ原生林の木漏れ日が差し込む登山道は急斜面だが、木の根と土の道で歩きやすい。連続する登りに疲れが出るころに「水場」に着く。岩の間からしみ出す冷たい清水でのどを潤し、再び山頂を目指す。
水場から先の登山道は傾斜が緩やかになる。木道が現れ、樹林帯を抜けると一気に眺望が広がった。まぶしい草紅葉の中を空に向かって伸びてゆく木道の先に「駒の小屋」、さらに先に丸みを帯びた山頂が見える。「登りの苦しさが吹き飛ぶようだ」。目の前に飛び込んできた景色に、ストックを手に登ってきた初老の夫婦が思わず足を止めた。
山頂からは南会津、日光など周囲の山々が見え、条件に恵まれればかなたに富士山も望める。見下ろした駒の小屋の後方に東北最高峰の燧ケ岳が雄々しくそびえる景色は、多くの登山者を魅了する。
心に感動を詰め込んで下山した後は、「アルザ尾瀬の郷」などの温泉で湯煙に包まれたい。湯の中で山上の景色を思い浮かべれば、満足感はより深まる。
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