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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 12 】 ヒメサユリ
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半世紀かけ栽培法確立
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自ら切り開いたほ場でヒメサユリの手入れをする月田さん=南会津町南郷地域
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ヒメサユリは別名オトメユリともいわれるように、淡いピンクの花はせいそな乙女を連想させる。しかし、栽培農家にとっては気難しい一面を持つ。
南会津町南郷地域の月田礼次郎さん(65)は、親の代からヒメサユリの栽培に取り組む。試行錯誤を繰り返して今年で50年、親子2代で栽培技術を確立した。自生の球根を移動させても根付かない。種から球根を育て花を咲かせるまでには4、5年かかる。しかも連作に弱く、数年ごとにほ場を変えなければならない。
月田さんのほ場は標高725メートルの開墾地。20歳の時から父親の指導の下、山の手入れを続けてきた。「山を生かさなければならない」が父親の口癖だった。「おやじが言っていたことがようやく分かる年になりました」
「ここだからできる」
少年時代から昆虫や植物に親しんできた月田さんは「県もりの案内人」や「県野生動物保護サポーター」を務める。開墾地には巨大なビオトープがあり、希少な昆虫や両生・は虫類が生息する。ほ乳類の頭骨標本作り、根曲がり杉でのホルン作りなど多彩な才能を発揮する。開墾地には県内外から子どもたちが訪れる。「林の中でのドッジボールは面白いですよ」と月田さん。「ここだからできること。ここでしかできないこと」を実践し続けている。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 ヒメサユリ 】
本県を含む東北3県と新潟県の一部にのみ分布。野生種は環境省のレッドリストで準絶滅危惧(きぐ)に挙げられる。
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民友携帯サイト
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