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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 26 】 屋敷林
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家屋を守る大事な遺産
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海岸沿いに広がるタブノキ林。黄金色に染まった水田や屋敷を囲みようにして季節風を潮から守る。写真上は広野火発、下は木戸川=楢葉町前原
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楢葉町の天神岬スポーツ公園の高台から見下ろす秋の田園風景。水田や家の周辺を深緑のうっそうとした林が囲む。その主な樹木はタブノキ。中通りや会津地方では、なじみのない照葉樹が海岸線沿いに広がる。
「海岸沿いは防潮林として残されたものでしょう」。県文化振興事業団の山内幹夫さん(55)=福島市=は楢葉町で生まれ育った。実家や父親の生家など、家は皆、照葉樹の木々に囲まれていた。冬でも葉を落とさない照葉樹を「子どものころは、当たり前だと思っていました」
屋敷林には防風、防潮などの効果のほか、火事の延焼を防ぐなど、多面的な側面を持っている。また、食料となる果樹や油を採るためにヤブツバキなどが植えられた。「林は家を守ってくれていました。先祖からの大事な遺産です」と山内さん。それが今、開発によって次々と姿を消している。県内のタブノキ林はごく限られたエリアにしか分布しない。森林文化としてタブノキの屋敷林を「何とか残していきたい」と話す。
個人の資産、保護に難問
山内さんは、3年前の冬に楢葉町の照葉樹林を調査し、海沿いから山際に至る種の変化をまとめた。今後も調査を継続したいと意欲を見せる。ただ、屋敷林は個人の所有物。保護はもちろん、調査ひとつにしても難問が待っている。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 タブノキ 】
クスノキ科タブノキ属の常緑高木。日本では東北地方から九州、沖縄に分布し、海岸近くに多い。
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