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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 31 】 ジュンサイ
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南湖で念願の丸い若葉
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福島大の黒沢高秀准教授の指導の下で、ジュンサイの調査をする佐藤真貴子さん(右)=白河市・南湖公園
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白河市の南湖でジュンサイ採りが最後に行われたのは、1992(平成4)年といわれる。ジュンサイの若芽は、つるりとした独特の食感が特徴。湖畔で食堂を営む竹内政美さんは、「湖面の半分ほどをジュンサイが覆い、夏場は競うように採っていました」と当時を懐かしむ。しかし、都市化による水質の悪化、工事などの影響もあり、ジュンサイは姿を消した。
今年、南湖を浄化しようという官民挙げての取り組みが実を結んだ。12年ぶりにジュンサイの発芽が確認されたのだ。
復元の期待一層高まる
ジュンサイの実生を発見したのは、福島大共生システム理工学類4年の佐藤真貴子さん。佐藤さんにとって南湖公園は、白河高時代に部活動の練習をした思い出深い場所。同大の生物多様性保全研究室で学ぶようになった佐藤さんは、南湖で「自分にできることがあるのか」と、南湖では既に消滅してしまった植物が現在も残る搦目山のため池の調査も開始した。データを比較し、南湖のジュンサイの復元の一助になればとの思いからだ。
今年の夏、佐藤さんは南湖の湖岸で水底に色鮮やかな丸い若葉を見つけた。念願のジュンサイの発芽だった。「この辺にありそうな気がしたんですよ」と佐藤さんは満面の笑みを見せた。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 ジュンサイ 】
多年生の浮葉植物。若葉の裏面は寒天質の粘液に覆われる。ほぼ全国に分布するが、絶滅した地域もある。
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