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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 40 】 凍み豆腐
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北風と天日が味を熟成
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吾妻、安達太良の山並みを背に、作業が続く凍み豆腐の天日干し=福島市立子山
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福島市立子山地区では特産の凍(し)み豆腐作りが最盛期を迎えている。薄黄色の“のれん”が整然と並ぶ風景は、福島市の冬の風物詩。冬枯れの景色に彩りを添えている。
立子山地区の冬は、西に連なる吾妻、安達太良の山並みから吹き下ろす寒風にさらされ厳しく冷え込む。凍み豆腐は、この自然の中で北風と天日でじっくりと干し上げられ、うま味がたっぷりと蓄えられるのだ。
「山の空模様を見て干すころ合いを決める。天気は西から変わるから」と話すのは、同地区の黒沢行男さん(74)。凍み豆腐を作り続けて約半世紀、地球温暖化の影響を肌身で感じてきた。「秋が遅い。気温が下がらない」。需要が多い12月に間に合わせるのが大変だと嘆く。
後継者不足が悩みの種
現在、豆腐を凍らせるのは冷蔵庫。作業場ではパートの主婦らが凍ったアメ色の豆腐を手際よくわらにつるしていく。昔に比べれば機械化は進んだが、天候に左右される上、手間が掛かる作業は決して楽ではない。どこの生産者も後継者不足に悩まされているという。
「年も年だし、いつまでできるものだか」と黒沢さん。「だが、古里の味をみんなに喜んで食べてもらえるのが励みになる」。3月末まで、山の天気とにらめっこの日々が続く。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 凍み豆腐 】
豆腐を凍結乾燥させた保存食品。乾燥状態では軽いスポンジ状で、水で戻して煮物や味噌汁の具などに調理する。
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