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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 43 】 ほうき作り
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昔ながらの良品伝える
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自宅でほうき作りを指導する泉さん=大熊町
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約40年、毎年、20本から30本はほうきを作っているというのは、泉博子さん(82)=大熊町。ほうき作りは、ホウキモロコシの種を植えることから始まる。良いほうきを作るには、「良い草を育てること。これが大変」と泉さん。長年の技で、民芸品のように美しく束ねられたほうきは、長く真っすぐに育ったほうき草があってこそという。
泉さんの作るほうきは、一本ではたき、畳、板の間と万能に使える。「昔の物は本当に良くできている。それを伝えるのが自分の役目」。自宅や公民館などに出向いて講習会も行っている。参加者の作るほうきをチェックしながら「てんぐりいい(手さばきが良い)」と、時にはおだてて回る。腰は曲がっているものの、その動きは軽やかだ。
衣食住は手作りの品で
18歳で嫁いで以来、昼は農業、夜は手仕事と、休むことなく働き続けてきた。4人の子どもも育てた。次男の篤さんは「(母は)とにかく何でもする。熱中すると朝までしている」と笑う。衣類のリフォーム、こたつ布団、座布団カバー、壁に掛かるリースなど、自宅は手作りの品ばかり。
60年以上作り続けているという凍(し)みもち、麹(こうじ)から作るみそ、漬物など、泉さんが作る物は大量。「もらった人が喜んでくれる。それが生きる力になる」からだという。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 ホウキモロコシ 】
北アフリカ原産のイネ科モロコシ属の一年草。実が食用の「とんぶり」になるホウキギとは別種。
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