【 末廣酒造 】 地球規模に広がる"夢"<会津若松市>

 
「もろみ」をかきまぜる「かい入れ」の作業を行う杜氏の佐藤寿一さん=会津若松市・嘉永蔵

 日本酒の多様化は急だ。その魅力を聞こうと、新しい取り組みを続ける末廣酒造(会津若松市)で、国内外を飛び回る社長、7代目新城猪之吉さん(65)=写真・下=をつかまえた。

 新城さんはメーカーと醸造試験場での修業を終え、実家の同社に入社した1979(昭和54)年、まず実行したのが醸造アルコールなどを加え増量する3倍醸造の見直し。「試験場でワインと比べ日本酒の甘さに衝撃を受けた。反対もあったが、瓶に『酒米増量』のシールを貼ったら、かなり売れた」

 当時珍しかった吟醸酒の開発に着手したのもこのころ。これが現在の大吟醸「玄宰(げんさい)」に結実した。

 この玄宰、香りがとにかく豪華だ。「自宅で飲むにはもったいない」と言うと「一番大切なのは酒と食とのマッチング」と7代目。

 90年代、新城さんが利き酒制度を作ろうと田崎真也さんらソムリエと考えたのが「軽快でなめらか」「香り高い」「うま味がある」「熟成」という日本酒の4分類。「酒は状況や料理に応じタイプを選ぶもの。だから種類も増やした。香り高い玄宰はワイングラスなど口の広い器で。普段の食事と一緒なら『山廃純米』。これはお燗(かん)するとよりおいしい」と言う。

 先のミラノ国際博覧会では、同社の微発泡酒「ぷちぷち」とオードブル「かまぼこのフリッター・ワサビソース」など、日本酒と料理とのマッチングの妙が注目を浴びた。「北欧市場でも攻めている。北欧は魚を食べるから燗酒が合う」。お酒の夢は地球規模だ。

末廣酒造

 杜氏制度を県内初導入
 創業は1850(嘉永3)年。当主は代々猪之吉を襲名。明治期から続く会津若松市の嘉永蔵は喫茶室や見学コースを併設。1996(平成8)年からは会津美里町で主力工場・博士蔵を稼働する。県内初の杜氏(とうじ)制度導入や原料米の契約栽培など代々先進的な酒造りに取り組み、全国新酒鑑評会5年連続金賞の実績を誇る。本年度東北清酒鑑評会では「末廣」が純米酒部門最優秀賞を受賞するなどした。嘉永蔵(電話)0242・27・0002

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