【 大和川酒造店 】 真の地酒へ続く挑戦<喜多方市>

 
頻繁にこうじの温度を点検しながら、発酵具合を調節する杜氏の佐藤さん=喜多方市・大和川酒造店飯豊蔵

 「酒米の王様」と称され、北国での栽培が難しい「山田錦」を会津地方で作る。大和川酒造店(喜多方市)は、この挑戦をひたむきに続けている。根底にあるのは、喜多方のコメや水を地元の人の手で仕込む"真の地酒"に対する熱意だ。

 飯豊山の伏流水や全国トップブランドのコメ、発酵に適した風土。戦前は市内に約30の酒蔵が存在したと言われ、社長の佐藤和典さん(58)=写真・下=は「喜多方は三拍子がそろっている」と力を込める。

 創業以来、県外から原料米を仕入れたことはない。1997(平成9)年には農業法人「大和川ファーム」を設立、今や自社栽培が全体の3分の2を占める。山田錦からは雑味がなく、ふくよかで切れのある酒が生まれる。全国新酒鑑評会で金賞に選ばれる大半が兵庫県産を使用する中、地元産で仕込み、2011年から5年連続で金賞を受賞。佐藤さんは「まだ本家の兵庫県産にはかなわないが、品質は決して低くない」と話す。

 杜氏(とうじ)の佐藤哲野(てつや)さん(31)は就任1年目の昨季、手掛けた酒が県酒造組合の鑑評会で春、秋と純米酒の部知事賞に輝いた。お薦めを尋ねると、冷やから熱かんまで自由に楽しめるという売れ筋の「純米辛口 弥右衛門」を推す。もともと甘口が評判だった同社の印象を辛口に変えた商品だ。このほか新感覚の「スパークリング珠泡(しゅあわ)」は「甘すぎないドライさ」が特長で乾杯用として注目を集める。真の地酒への独自の取り組みが実を結ぼうとしている。






大和川酒造店

 「弥右衛門」を代々襲名
 江戸時代中期の1790(寛政2)年に創業。当主は代表銘柄でもある「弥右衛門」を代々襲名する。 1990(平成2)年、郊外の濁川東側に醸造拠点の「飯豊蔵」を新設した。本社を置く市街地の旧酒蔵を「大和川酒蔵北方風土館」と名付け、観光客や市民らに開放している。期間限定を除くほぼ全種類の商品の試飲が楽しめる。200年以上前に建築された歴史を感じさせる「江戸蔵」なども見学できる。大和川酒造店(電話)0241・22・2233

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