【 人気酒造 】 鮮度の秘密は火入れ<二本松市>

 
酵母を育てる酒母造りの作業を行う蔵人=二本松市・人気酒造

 「ぜひ、ワイングラスで味わってください」。人気酒造(二本松市)の社長遊佐勇人さん(50)=写真・下=が切り出した。華やかな香りとフルーティーさが「人気一」の特長。それを楽しむにはワイングラスが最適なのだという。

 日本酒好きが高じ、観光協会の仕事を辞めて転職した製造部の鈴木恵美子さん(38)の案内で酒蔵の中を見て回った。フレッシュな味わいが楽しめる人気酒造の秘密は火入れの工程にあった。

 通常、新酒は不純物を取り除く濾過(ろか)、熱殺菌のための火入れを経てタンクに貯蔵され、瓶詰めする際に2度目の火入れをする。それに対し、同社は最初の火入れの後、すぐに瓶詰めする。温かい状態で瓶詰めし、冷えると瓶内の液面が下がるため内部の酸素は薄くなり、酸化を抑えるという。

 「お酒をあまりいじめないようにしています」。鈴木さんが、いたずらっぽく笑う。他の酒蔵で、よく目にする貯蔵タンクがずらりと並ぶ光景は、ここでは見られず、瓶詰めされた商品が酒蔵の中で静かに出荷の時を待っている。

 鈴木さんは、蒸気の制御で日本酒に適した「外硬内軟」の蒸し米に仕上げていることも教えてくれた。外側が硬く、内側が軟らかいため、溶け具合が穏やかなのだという。

 輸出拡大にも精力的で、「1割以上が輸出」と遊佐さん。1月のダボス会議にも純米大吟醸が提供された。「日本でも海外でもファンを広げる。あまり日本酒を飲んでいなかった人も飲みたくなるような新しいお酒を造りたい」。人気酒造の挑戦は続く。

人気酒造

 一番目指す意味込める
 1897(明治30)年創業の大内酒造が前身。2007(平成19)年に人気酒造となった。東日本大震災で地盤が被害を受け、11年10月に現在地に移転。水が豊富で、ミネラル成分をバランスよく含んだ安達太良の伏流水は最適な仕込み水となっている。銘柄の由来は、古くから二本松にあった銘柄「人氣」。「人が気を込めて醸す」と解釈し、一番を目指す「一」を加えて銘柄を「人気一」とした。人気酒造(電話)0243・23・2091

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