【 四家酒造店 】 地元で圧倒的な人気<いわき市>

 
約8度程度の生酒を釜でたいた熱湯で65度以上にして貯蔵タンクに送る火入れ作業。酒の温度を確認する菅原さん

 「地元に親しまれる酒でありたい」。いわき市に酒蔵を構える四家(しけ)酒造店の7代目蔵元、四家久央さん(45)=写真・下=は、地元に根差した酒造りを信条としてきた。そして、銘柄「又兵衛」は、同市を代表する日本酒となった。

 酒蔵で生み出された酒は9割以上が市内で消費され、市民に圧倒的な人気を誇る。日本酒愛好家だった創業者が造り始めたという酒は約170年にわたって受け継がれ、確かな酒造技術で根強く愛されている。

 近年、純米酒志向が高まり、地元酒店や市民らから寄せられた多くの要望を受け、今年2月に四家酒造店初となる純米吟醸酒の「又兵衛 純米吟醸」を発売した。

 県産の酒造好適米「夢の香」を使用し、精米歩合は純米大吟醸に匹敵する50%。透き通った味わいが特徴で、和食、洋食ともに相性がいいという。また、香りの異なる麹(こうじ)2種類を合わせて仕込んだことで「冷やもお薦めだが、ぬる燗(かん)は香りのたち方が変わってくる」。四家さんは楽しみ方を教えてくれた。

 酒の搾り、ろ過と醸造の最終段階に入った酒蔵に杜氏(とうじ)の菅原栄一さん(77)の姿があった。杜氏歴30年を超えるベテランは「今年の酒も上出来だ」と職人の顔からこぼれた笑みが新酒への自信をのぞかせる。

 「いわきの人たちが、どこに持って行っても『いいお酒だね』と言われる酒を造っていきたい」と四家さん。地元を魅了する日本酒の背景に、いわきを愛する蔵元の心を垣間見た。


四家酒造店

 自ら楽しむために創業
 1845(弘化2)年、四家又兵衛が自ら酒を楽しむために酒造りを始めたことがきっかけとされる。先代蔵元の故四家良一さんが代表銘柄「又兵衛」を称した。女性にも飲みやすい甘口特別純米酒「又兵衛 ふくみ」や辛口本醸造酒「又兵衛 いわき丸」などをはじめ、期間限定で生酒やにごり酒も販売。幅広いニーズに対応した酒がそろう。全国新酒鑑評会では1996(平成8)年以降、13度の金賞受賞。四家酒造店(電話)0246・26・3504

四家酒造店