【 千駒酒造 】 味守るため心血注ぐ<白河市>

 
瓶詰めを前に日本酒の成分や品質の最終確認をする菊地さん

 「地元に愛される日本酒を目指している」。千駒酒造(白河市)の桜井慶社長(48)=写真・下=と杜氏(とうじ)の菊地忠治さん(58)は、伝統の銘柄「千駒」への思いを共にする。自慢の大吟醸や純米大吟醸はもちろん、同市産米100%使用で市の農産物ブランド認証を受ける純米吟醸「五百万石」は味わい深く、市民の舌を楽しませている。

 東日本大震災時は、東京電力福島第1原発事故の影響で県産米の仕入れが間に合わず、全国の農協などを訪問し仕込みまでこぎ着けた。「多くの支援のおかげで酒造りが続けられている。丹精した『千駒』の味で恩返ししたい」と桜井社長は言葉に力を込めた。

 同酒造は、粒が大きくでんぷんを多く含む高品質の酒造好適米を県内や全国各地のコメから厳選し、素材の良さを最大限に引き出す。水は地下約20メートルに湧く那須甲子連峰の中硬水を使用し、すっきりとした飲み口を生み出している。「常温か冷やだね。魚、肉料理に合う」と楽しみ方を菊地さんは語った。

 酒造りの工程はほとんどが手作業。洗米、昔ながらの甑(こしき)と呼ばれる釜で酒米を蒸し、伝統の箱麹(はここうじ)造りに、仕込み、かいいれ、しぼり、アミノ酸などの成分分析を丁寧に行う。箱麹造りでは、菊地さんが、約1週間もの間、昼夜を問わず2時間間隔の温度管理を行い、変わらない味を保っている。

 「0.5度でも、管理を怠ったら出荷しない」と職人としての表情をうかがわせる菊地さん。「千駒」の酒を守るために心血を注ぎ続ける。


 

酒造りに使用するコメの品質にこだわり最高の日本酒の提供を誓う桜井社長

 納豆とミカンは禁止
 池島酒造店として1923(大正12)年に創業。76年に現在の社名に変更した。「千駒」の名は、白河地域で盛んだった馬市に人と馬があふれかえる景観と若駒の蹄(ひづめ)の音やたくましい姿を酒に託し人々の健康を祈ったことに由来する。蔵人には麹(こうじ)菌などを殺さないよう納豆や、手に皮の一部が残りやすいミカンを食べることを禁止するしきたりが残り、創業以来の味を造り続ける。千駒酒造(電)0248・23・3057

洗練された味わいが楽しめる千駒酒造の商品ラインアップ