【 白井酒造店 】 伝統の中に新しい風<会津美里町>

 
新酒の仕込み作業に当たる蔵人たち=会津美里町・白井酒造店

 旧街道の面影が残る国道401号沿いに立つ白井酒造店(会津美里町)。その歴史は古く、1765(明和2)年創業とされる。敷地には相当な樹齢と推測される大ケヤキが高くそびえ、歴史の長さを強調する。酒米を蒸す際の蒸気を外に出す煙突にも趣があり、伝統の重みを感じさせる。

 伝統を引き継ぐのは、県清酒アカデミー職業能力開発校3期生で9代目の白井栄一さん(44)=写真・下。酒造りのこつを尋ねると、「小さい酒蔵だけにお金はかけられない。落ち着いて、丁寧に。それだけです」との言葉が返ってきた。

 道路が雪で白く染まった日に酒蔵を訪ねると、酒米を蒸して冷却機で放冷し、袋に入れて交代で担ぎタンクに入れる作業が始まった。仕込みを担当する蔵人は代表社員の白井さんを含め8人。25歳の若手からベテランまでが息を合わせて作業し、次々に手際よくタンクに酒米を投入していく。

 華やかな味わいが特徴の代表銘柄「萬代芳」に加え、自然農法グループとの出会いから新銘柄「風が吹く」が生まれた。フルーティーで華やかな香りと甘味、うま味が楽しめる上品な酒に仕上げた。同町の精進料理店の障子に書かれていたこの文章が気に入り、銘柄の名前にしたという。

 長年務めた南部杜氏(とうじ)が亡くなった。白井さんは「どうしようと悩んでいる時に背中を押してくれた人だった」と残念がる。「でも、失敗して覚えることもあると教わった」と、おいしい酒で恩に報いる覚悟だ。


白井酒造店

 歴史を伝える蔵構え
 酒どころ会津で創業250年以上の歴史と伝統を誇り、今なお風情ある蔵を構える。油や豆腐製造、豆卸商などを兼ねた商家からの分家で、代表社員の白井栄一さんは9代目。長く地元で愛される「萬代芳」を受け継ぎながら、2005(平成17)酒造年度に新銘柄「風が吹く」を発表し、多くの人気を集めている。全国新酒鑑評会金賞、16年の東北清酒鑑評会純米酒の部最優秀賞など多数の受賞実績を誇る。白井酒造店(電話)0242・54・3022

白井酒造店