【 佐藤酒造店 】 時代に合わせ再出発<郡山市>

 
心機一転、洗米に取り組む従業員=郡山市・佐藤酒造店

 JR郡山駅から北へ約1.5キロと都市部の奥州街道沿いに酒蔵を構える佐藤酒造店(郡山市)。時代のニーズに合わせ、昨年末に米洗い機など設備を一新し、吟醸、純米大吟醸主体の酒造りに切り替えを図る。「地元に根差した酒蔵として、地元の人が毎日飲める酒を目指す」と、14代目社長の佐藤彦十郎さん(61)は心機一転、飛躍を誓う。

 代表銘柄「藤乃井」は、酒蔵の敷地に美しいフジが咲いていたことから、通り掛かった二本松藩主丹羽公が名付けたとされる。

 酒蔵を大幅改装する一方、力強い助っ人も加わった。南部杜氏(とうじ)の高橋正芳さん(69)だ。約50年の酒造りの経験を生かし、新たな"藤乃井ブランド"の核となる吟醸、純米大吟醸の味を模索している。仕込み作業では洗米後、吸水し、コメの水分量を一定にさせるため脱水を行う独自の手法を取り入れた。高橋さんは「香りがあり、フルーティーで飲みやすい酒を造りたい」と新天地で誠心誠意、仕込み作業に汗を流す。

 「純米酒 藤乃井」は、35度程度のぬる燗(かん)で味わうのがお薦め。一方、「別撰 藤乃井原酒」は、パンチのある辛口19度。「ロックで飲んでほしい。氷が溶け始めたころに、刺し身と一緒に味わうと最高においしい」と太鼓判を押す。

 新酒は3月下旬にも店頭に並ぶ予定。佐藤さんは「ここからが出発点。手間を惜しまず基本に忠実な酒造りを心掛け、付加価値のある酒を造っていきたい」と言葉に力を込めた。



 煙突に代表銘柄の名
 佐藤酒造店の前身である藤屋本店は1710(宝永7)年に創業した。300年余りの歴史の上にたたずむ酒蔵は、今もまだその姿を残し、存在感を放っている。風情ある酒蔵の煙突には代表ブランドの「藤乃井」と書かれている。郡山市のグループ会社「みちのく酒販」では、業務店向けなどのオリジナル商品の販売も手掛けている。これまでに東北新酒鑑評会優等賞受賞などの実績を誇る。佐藤酒造店(電話)024・922・1763

代表銘柄「藤乃井」の(右から)純米酒、原酒、本醸造