【 小原酒造 】 名曲とともに上質に<喜多方市>

 
多彩な商品が販売されている店内=喜多方市・小原酒造

 1717(享保2)年に創業の小原酒造(喜多方市)。酒造りの歴史を着実に積み重ね、今年で300年を迎える。数多くの蔵が立ち並ぶ同市小田付地区の通り沿いにある酒蔵を訪ねると、10代目の小原公助さん(61)が出迎えてくれた。

 今から30年以上前、小原さんは酒造りを学ぶ前に関東地方の問屋で1年間修業した。「ほとんど休みはなかった。北関東を中心に車を毎日走らせた。酒造りを学ぶ前に修業できたことは大きかった」と懐かしがる。その後、醸造試験所で酒造りについて1年間学んだ。恩師に「これからは純米酒を造ることだ」と言われたことが強く印象に残っているという。

 「蔵粋(くらしっく)」と名付けられた酒が有名。モーツァルトを聴かせた、もろみから造った酒だ。演歌、ジャズ、クラシック...。もろみに違うジャンルの音楽をそれぞれ聴かせる実験をした。その結果、興味深いことが分かった。「クラシックの中でも、モーツァルトを聴かせた、もろみで造った酒の質が良好だった。雑味の少ない酒ができるとの結果が得られた。あのときはとても興奮した」

 甘さと華やかな香りが特徴の「大吟醸純米交響曲 蔵粋」。「純米協奏曲 蔵粋」は柔らかで広がりのある上品な味わい。

 仕込み蔵に流れるクラシックの調べ。「酒造りは変化しているが、先人のおかげで今がある」。時代が変わっても人々を魅了する名曲のように、いつまでも愛される酒を造り続ける。


小原酒造

 蔵の歴史的価値に注目
 小原酒造がある喜多方市小田付地区は、4000棟を超える蔵があるとされる同市の中でも特に蔵が集中しており、歴史的な価値も注目されている。酒蔵は江戸時代に建てられ、東日本大震災でも崩れることがなかったという。店内のショップは大みそかと元日を除き営業しており、看板銘柄「蔵粋(くらしっく)」シリーズなど多彩な商品が販売されている。試飲可能。見学無料。営業時間は午前9時~午後5時。小原酒造(電話)0241・22・0074

小原酒造