「木桶」使い元来の酒造り 自給自足酒蔵へ仁井田本家こだわる

 
自給自足の酒蔵づくりを決意する仁井田社長(左)と芽生さん

 郡山市の酒造会社仁井田本家は24日、木製の仕込み桶(おけ)を使って元来の酒造りをするプロジェクトを始動させた。コメや水だけでなく、桶も地元産にこだわった「自給自足の酒蔵」を目指していく。

 日本酒は元来、木桶で醸造されていたが、現代はホーローやステンレスが主流。同社によると、木桶で醸造した酒は、味に複雑さや奥行きが出るなどの利点がある。接着剤などを一切使わずに固定するが、丈夫で100年以上使い続けられるという。同社は1711年の創業以来、「自然派」な酒造り、コメ作りにこだわってきた。18代目蔵元の仁井田穏彦社長(54)の祖父で16代目の蔵元穏貞さんが蔵に残した杉林の木が成長したのを機に、原点に返り、その木で仕込み桶を作る構想が生まれた。

 同日は、木桶仕込みのしょうゆ造りが盛んな小豆島で製作された直径最大1.85メートル、高さ約2メートルの木桶が酒蔵に届いた。仁井田社長も製作に携わったほか、自木桶を作り続けられるよう同社のスタッフが小豆島で技術を学んだ。

 「100年後の蔵人へ」と銘打ったセレモニーを開き、仁井田社長が木桶の底板に「贈 十九代へ 十八代穏彦」と筆を入れた。スタッフらが「届け未来の蔵人へ」などとメッセージを書き込み、19代目を継ぐ仁井田社長の長女芽生さん(10)、次女咲希さん(8)が手形を押した。

 今回の木桶には奈良県の杉が使われた。今後は蔵の杉林の木で製作し、将来的に20本の仕込みタンク全て木桶にしていく方針だ。