純米吟醸酒「soma」完成 新たな農業へ、南相馬のコメ農家

 
口切りの特別デザインを施した純米吟醸酒「soma」

 南相馬市鹿島区のコメ農家豊田寿博さん(37)は、自ら栽培した酒米を使った純米吟醸酒「soma」(ソーマ)を完成させた。「南相馬の新たな農業の口切りを祝う日本酒」―との願いを込めてつくった。豊田さんは「この日本酒を通して、南相馬の食のおいしさを伝えたい」と意気込む。

 鹿島区の農地20アールで昨年栽培した酒造好適米「夢の香」を使った。「地元の酒蔵さんに造ってもらいたい」との思いから、東日本大震災で浪江町から山形県長井市に拠点を移す鈴木酒造店に製造を依頼。初年度の今回は720ミリリットル瓶800本を生産した。

 豊田さんは2007(平成19)年、祖父の代から続くコメ農家の道へ進んだ。有機無農薬のアイガモ農法で作ったコメは、一般的なコメと比べ3倍の値段が付くほどの人気を誇った。震災と原発事故による営農中断を経て、15年にコメ作りを再開。しかし、被災地で生産されたコメにはかつての客からも不安がられた。被災地でのコメ作りの可能性を模索する中で「コメのおいしさ」を伝える一つの切り口として、日本酒造りに挑戦することを決意した。

 今回生産したうちの400本は、豊田さんの新たな出発の意味を込め、ひもでパッケージを切って開封する"口切り酒"の特別デザインを施した。豊田さんによると、若干辛口だがフルーティーで飲みやすく、コメの味が楽しめるという。ブランド名の「soma」は、サンスクリット語で「神の飲み物」という意味もある。

 今月中旬ごろからインターネット通販で販売を始める。南相馬市内の飲食店でも順次、提供される予定だ。

 豊田さんは来年度、夢の香のほかに山田錦と福乃香の計3品種の酒米で酒造りに取り組む予定で、クラウドファンディングで資金調達を始めた。豊田さんは4日、南相馬市役所を訪れ、門馬和夫市長に完成を報告した。