福島県『8連覇』...持ち越しに 全国新酒鑑評会「中止」決まる

 
倉庫に山積みとなった新酒の在庫を見つめる新城社長

 「明るいニュースを届けたかった」「残念」―。全国新酒鑑評会の金賞を選ぶ決審の中止が決まった7日、金賞銘柄数の8年連続「日本一」が期待されていただけに県内の関係者は一様に肩を落とした。日本酒の出荷量は大きく落ち込んでおり、新型コロナウイルスの影響は好調が続いてきた本県酒造業界にも広がっている。

 「今年の冬も心を込めて仕込み、おいしいお酒ができたのに、福島の酒が全国的に評価される機会を失い残念」。昨年3年連続13度目の金賞を獲得した福島市唯一の酒蔵、金水晶酒造店の斎藤美幸社長は率直な思いを語った。「全国にアピールする機会がなくなってしまったので、県民の皆さんに、県外の人に贈り物が必要な時には福島の酒を選んでもらい、広く紹介していただければうれしい」と願う。

 昨年12年連続金賞を獲得した南会津町の国権酒造の細井信浩社長(48)も「社会が不安に包まれる中、福島に明るい話題を届けられると思っていただけに本当に残念だ」と落胆する。

 各蔵元の技術指導に当たり、本県の7連覇をけん引してきた鈴木賢二県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター副所長(58)は県産日本酒の出来を「8連覇が間違いなく期待できた」とし、「本県のレベルの高さを実感できていただけに残念としか言いようがない」と胸の内を語った。

 飲食休業で出荷減

 新型コロナウイルスの感染拡大で花見や歓送迎会が軒並み中止となり、日本酒の出荷量は大きく落ち込んでいる。緊急事態宣言を受け、営業時間の短縮や休業の対応を取る居酒屋が増加。「家飲み」の消費量は限られ、県酒造組合によると、歓迎会などで例年出荷量の多い4月は前年比5割程度まで低迷した可能性がある。

 末廣酒造(会津若松市)は売り上げの約3割を県外が占め都内に営業担当者を常駐させているが、4月から自宅待機にした。前県酒造組合会長の新城猪之吉社長(69)は「感染から社員を守るのが第一。ただ飲食店が休んでいるから営業先がない」と話し、倉庫に山積みとなった新酒の在庫を見つめる。それでもインターネット販売に力を入れたり、消費者にはがきを送って購入を呼び掛けたり模索を続ける。「感染症が落ち着いた時のためにも、今買ってくれる客を大切にしなければならない」と強調する。

 新城社長は、こうした中での新酒鑑評会の決審中止に「最高の出来だと思っていただけに、ショックだとしか言いようがない」と声を落とすが、「2020年は世の中にない年だったと思うしかない。1年空いても8連覇と称していいのだとすれば、それに向かって頑張りたい」と前を向いた。