福島県産日本酒、出来栄え「例年以上」 コメ性質・対応力評価

 
「本県蔵元のレベルの高さを改めて示した」とたたえる鈴木副所長

 県内各蔵元の技術指導に当たる県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの鈴木賢二副所長(58)は、33点の入賞を「満足できる素晴らしい成績。本県蔵元のレベルの高さが改めて証明された」と高く評価した。

 都道府県別の出品数は公表されていないが、鈴木副所長によると、本県の出品数は約40点。入賞数39点で最多の新潟は、出品数は本県の約1.8倍の約70点。本県と入賞数が同じ長野も出品数は約60点で本県を上回り、出品数に対する「入賞率」では本県が勝っているとみられる。鈴木副所長は「県産酒は決審に強く、入賞酒から金賞に選ばれる割合も高い。例年と比べても今回の酒は良い出来栄えで、決審が行われれば8連覇も十分に狙えた」との見方を示す。

 また、「入賞を逃した中にも入賞酒と遜色のない酒が複数あった」とも述べ、各蔵元の技術力をたたえる。

 鈴木副所長は、コメの質に合わせて酒を仕込む「対応力」の高さを特に評価した。鈴木副所長によると、多くの蔵元が前回に続き、兵庫県産の「山田錦」を使用。前回は「ここ10年で最も溶けやすい」特徴があったが、今回は硬く溶けにくい性質だった。

 こうした分析結果を踏まえ、鈴木副所長は各蔵元に、コメの性質が似ている3年前の酒造りを参考にするよう指導した。それが功を奏し、「全体的に軽快な味で、香りも程よく仕上がっていた」という。

 来年の全国新酒鑑評会は、都道府県別の金賞受賞数8連覇が懸かる。鈴木副所長は「新潟、長野など他県も鑑評会に力を入れてきているが、本県の酒造りはレベルが高い。それぞれの蔵元に今回の反省があると思うが、次回も良い酒を造ってほしい」と話した。

 全体的に金賞レベル多く 県酒造組合会長・有賀義裕氏

 県酒造組合の有賀義裕会長(66)は「今年出品された新酒は、全体的に出来が良く金賞レベルのものが多かった」と評価する。

 新型コロナウイルスの影響で金賞を選ぶ決審が行われなかったことについては「レベルが高かったからこそなくなってしまったのは残念。新潟や長野の入賞数も多かったが、福島が金賞数8年連続日本一になる可能性は大きかった」と悔しがる。

 新型コロナの影響で日本酒の売り上げが落ちる中、来年の酒米の作付けは始まっているが、「酒が売れないと来年の新酒を減産せざるを得なくなる」と危機感を示す。一方で、「連続記録が途切れたわけじゃない。震災や台風、コロナなど暗いニュースが続く中、明るい話題を提供できるよう8連覇へ気を引き締めて頑張っていきたい」と、来年に期待を込めた。