道の駅から開く「酒造り」再開の道!鈴木酒造店10年ぶり地元へ
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受け、避難先の山形県長井市で酒造りを行っている浪江町請戸の老舗酒造会社「鈴木酒造店」が来春、同町に完成する道の駅なみえの酒蔵で酒造りを始める。約10年ぶりの地元での酒造り再開に、社長で杜氏(とうじ)の鈴木大介さん(47)は「準備してくれた関係者や期待してくれている人のため、しっかりとしたものを造りたい」と意気込む。
「日本一海に近い酒蔵」
日本酒「磐城壽(ことぶき)」で知られる同社は海沿いに酒蔵を構え、「日本一海に近い酒蔵」と言われていた。しかし東日本大震災の津波で酒蔵は全て流失、その後の東京電力福島第1原発事故により町外に避難せざるを得なかった。避難先の山形県で、後継者不在で酒造りを諦めていた酒造会社を紹介され、移転を決意。2011(平成23)年秋、酒造りを再開した。
震災・原発事故後、町内ではコメの実証栽培などが始まった。「いつの日か故郷の浪江町で酒造りをしたい」。震災9年の節目を迎えた今年3月11日には、長井市の知人らとともに酒蔵のあった同町請戸を訪れた。
8月1日に先行開所する道の駅なみえの敷地には、町の地場産品販売施設として酒蔵などが本年度中に整備される予定だ。この酒蔵の運営会社の公募に応じたのが、鈴木さんだった。
道の駅に酒蔵が整備されるのは国内では珍しいという。鈴木さんは通年で日本酒の仕込みを行い、一升瓶換算で年間2万本を製造する計画で、リキュールや清涼飲料水の製造も考えているという。浪江町で働く予定のスタッフは現在、長井市の酒蔵で修業中だ。
1日の道の駅開所を前にした27日、納品のため同施設を訪れた鈴木さんは「浪江の素材にこだわらず、新しい価値観や技術で造る酒もあるが、浪江の暮らしに合った酒や、浪江の原材料で造って品評会などでも勝負できる酒。この3本柱で酒造りに取り組みたい」と話した。
震災・原発事故から10年の時を経て、再び始まる故郷の浪江町での酒造り。「自分たちにとっては、第三の創業。浪江の人たちにとって、誇りが持てる酒を造りたい」と力を込めた。
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