大熊米の酒「帰忘郷」完成 純米吟醸酒、会津若松でお披露目会

 
完成した純米吟醸酒を高橋社長から受け取る吉田町長(左)

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された大熊町大川原地区で昨年、実証栽培された酒米を使った純米吟醸酒「帰忘郷(きぼうきょう)」が完成した。

 原発事故で多くの大熊町民が避難した会津若松市の蔵元「高橋庄作酒造店」で醸造。完成お披露目会が10日、市内で開かれ、関係者が大熊町と会津若松市の縁を深める酒の完成を祝った。

 帰忘郷には「常に心には大熊町があり、故郷を忘れずにいる」との思いを込めた。町役場西側の水田で栽培した酒米「五百万石」を使用した。高橋庄作酒造店が銘柄「会津娘」と同じ製造手法で醸造し、穏やかな香りと透明感があり、懐の深い味が楽しめるという。

 お披露目会には吉田淳大熊町長、同店の高橋亘社長、室井照平会津若松市長らが出席。吉田町長は「愛情を込めて造っていただいた。(原発事故から)10年かかったが、少しずつ進んでいることを実感できた」と感謝。高橋社長は「県内外にいる大熊町出身の皆さんが故郷を思う助けになれば」と話した。

 製造された720ミリリットル入り約1150本は販売せず町民らが参加するイベントで振る舞ったり、関係者に配布する。町産米を使った酒造りに取り組むプロジェクトは今後も継続する。

 新年度に収穫したコメで造った日本酒については販売する予定。プロジェクトを担うおおくままちづくり公社は3月31日までクラウドファンディングサービス「レディーフォー」で資金を募っている。