【全国新酒鑑評会8連覇の輝き(上)】清酒アカデミー出身杜氏活躍

 
「同世代の中でも良い酒を造りたい、という気持ちが切磋琢磨につながる」と話す松崎さん=天栄村・松崎酒造 (左)「日本酒といえば福島」を目指し良い酒造りを心掛ける鈴木さん=会津坂下町・曙酒造

 全国新酒鑑評会の金賞銘柄数で史上最多8回連続の「日本一」に輝いた本県。新進気鋭の若手杜氏(とうじ)が次々と頭角を現し、「黄金期」を迎えている。共通点は県酒造組合が運営する県清酒アカデミー職業能力開発校で酒造りの基礎を築いてきたことだ。同期生らは今も良きライバルとして、互いを高め合っている。

 「廣戸川」「一生青春」「東豊国」「笹正宗」「田島」―。これらの金賞酒を手掛けたのは、いずれも30代半ばの蔵元杜氏だ。

 「廣戸川」で金賞を獲得した松崎酒造(天栄村)の専務松崎祐行(ひろゆき)さん(36)は2008(平成20)年入校の17期生。11年に26歳の若さで杜氏に就いた。地元の県オリジナル酒造好適米「夢の香」を使って仕込む「廣戸川」はフレッシュでうま味やキレのある飲み口が特徴で、県内屈指の人気を誇る銘酒となった。

 松崎さんはアカデミーで酒の仕込みや出荷管理、販売戦略などを一から教わった。同期生とも互いの蔵から持ち寄った酒を飲んで意見を交わすなど研さんを重ねた。「切磋琢磨(せっさたくま)できる仲間と出会い、技術や知識を学べた」と当時を振り返り、「同世代の中でも良い酒を造りたい」と意気込む。

 「何を造っているのかはやっぱり気になる」。代表銘柄「一生青春」「天明」で知られる曙酒造(会津坂下町)の社長鈴木孝市さん(36)も17期生で、年齢の近い杜氏が造った新酒は必ず飲んで研究するという。

 東日本大震災で蔵が半壊し、転換期を迎えた時に杜氏を継いだ。蔵人の若返りや原点回帰を進め、金賞の常連に押し上げたが、現状に満足はしていない。「名実ともに『日本酒といえば福島』といわれるようにしたい」。全国新酒鑑評会の出品酒だけでなく、消費者が日常的に購入する市販酒のコンテストでも好成績を残す重要性を強調する。

 アカデミーは新潟県の取り組みを参考とし、1992(平成4)年に設立された。3年間の授業を修了すると、「酒造士」の認定証を取得できる。卒業生は約280人で、県産酒躍進の原動力になっている。

 アカデミーの基礎をつくった県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターの鈴木賢二副所長(59)は「酒はずっと同じ味が評価されるのではなく、時代によってトレンドがある」と話し、卒業生の若手杜氏が流行を取り入れた造り方などについて情報交換している関係を評価する。

 アカデミーには今年も11人が入校し、次世代を担う人材育成が行われている。