【全国新酒鑑評会8連覇の輝き(下)】コロナ禍、需要喚起あの手この手

 
金賞酒などが並ぶ福島市の県観光物産館。来店客が家飲み用や贈答用で県産酒を買い求めている

 県産酒を家飲み用でまとめ買いする40~50代の男性や、贈答用として購入する若い夫婦―。本県が全国新酒鑑評会の金賞銘柄数で「日本一」を達成してから初めての週末を迎えた福島市の県観光物産館には幅広い層の来店客が訪れた。館長の桜田武さん(51)は23日、金賞酒などが並ぶ店内で「売り切れた銘柄もある。コロナ禍で苦境に立たされた蔵元の応援になれば」と追い風を期待した。

 新型コロナウイルスの影響で飲食店を中心に日本酒の消費量が一段と落ち込んでいる。県酒造組合によると、昨年1年間の県産酒の出荷量は1113万リットル(前年比9.7%減)で、10年前の2010(平成22)年と比べて3割近く減った。

 近年の傾向とは真逆の現象が起きている。年々売れなくなっていた「普通酒」は節約志向を背景に安価なパック酒の需要が伸びた一方で、これまで好調だった吟醸酒や純米酒などの「特定名称酒」は振るわなかった。特定名称酒の比率が高い本県の酒蔵は打撃が大きく、大半が前年比20~30%減の出荷量にとどまる。

 「あの手この手で需要喚起を図っている」。県酒造組合の需要開発委員長を務める東海林伸夫さん(52)=夢心酒造社長=は、現在の取り組みを語る。

 感染拡大防止のため、会場に人を集めて県産酒をPRするイベントは難しい。このため、今月16日にオンライン形式の「どこでもふくしまの酒まつり」を企画。事前に県産酒やおつまみのセットを参加者に送り、当日はビデオ会議システムを活用して画面越しで乾杯した。北は北海道、南は福岡県から約200人が参加し、東海林さんは「全国の人とつながり、蔵元の思いを発信できるのがオンライン開催の利点だ」と説明する。

 地道な活動を続ける本県酒造関係者にとって今年の「日本一」は喜びもひとしおだ。週末、県観光物産館では4合瓶を中心に1日で約500本の県産酒が売れた。日本酒の知識や県内の蔵元に詳しいファンも多く、桜田さんは舌を巻く。「福島は消費者を含めて『日本酒王国』の土壌ができてきた」