福島県産日本酒9連覇 全国新酒鑑評会、金賞17銘柄

 
9回連続「日本一」を喜び合う金賞受賞蔵元の関係者や酒米生産者=25日、郡山市・県農業総合センター

 酒類総合研究所(広島県)は25日、2021酒造年度(21年7月~22年6月)の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会の審査結果を発表した。本県は都道府県別で全国トップとなる17銘柄が金賞を獲得、新型コロナウイルスの影響で最終審査の決審が中止となった19酒造年度を挟み、9回連続の「日本一」を達成した。

 本県の日本一は通算11度目。連続記録は昨年に続く更新で、10連覇の金字塔まであと一つに迫った。

 今年は全国から826点の出品があり、入賞405点の中から決審で金賞205点が選ばれた。都道府県別の金賞数は秋田と兵庫が13点で続き、新潟と長野が12点だった。入賞数も本県が32点とトップで、長野の27点、新潟の26点、広島の22点の順となった。

 有賀醸造(白河市)は初、おととし約20年ぶりに再開した男山酒造店(会津美里町)は復活後初めて金賞に輝いた。「奥の松」で知られる東日本酒造協業組合(二本松市)と名倉山酒造(会津若松市)は金賞受賞の記録を県内最多の13回連続に伸ばした。

 本県は県酒造組合が運営する県清酒アカデミー職業能力開発校を中心に人材育成が進み、若手杜氏(とうじ)らが次々と頭角を現す「黄金期」を迎えている。各蔵が互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら技術を高め合い、「日本酒王国」の実力をあらためて全国に示した。

 蔵元結束、最高水準保つ

 【解説】昨年の酒が良かったから今年も良いだろう―という理屈が通らないのが酒造りの難しさだ。県産日本酒の9回連続「日本一」は酒造りにかける熱意と技術の高さが常に最高水準にあることを示す偉業だ。

 本県の強さには、前県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター副所長で現在は県酒造組合の特別顧問を務める鈴木賢二さんの存在がある。原料米の分析など鈴木さんのアドバイスは本県の酒造りに欠かせない。

 商売でライバル関係にある蔵元が情報交換していることも、技術の底上げに結び付いている。酒造りの過程で「コメの溶け方のスピードが止まらない」など想定外の事態が起きると、蔵元同士が連絡を取り合い対処する。こうした取り組みが快挙を積み上げる源になっている。

 酒造りの技術が高まったことで、蔵元には味に個性を出そうという動きが出てくるようになった。吟醸香を左右する酵母選びで、ワインのような爽やかな酸味を加えることなどだ。酸味は鑑評会でマイナス評価になるが、技術が向上したことで、こうした「挑戦」が生まれた。

 鑑評会の出品酒は、市販されると、贈答品のような比較的高い値段になるものが多い。蔵元に期待したいのは、その下の、手にしやすい値段の酒への技術の応用だ。うまい酒がもっと増え、より多くの消費者に届くようになった時、「日本酒王国」の地位は不動のものになるだろう。それに欠かせない「技術的な土台」が整っていることは、9連覇の偉業が証明している。(阿部裕樹)

 県農業センターで記念パネル除幕

 県は25日、郡山市の県農業総合センターで記念セレモニーを行い、受賞蔵元の代表と井出孝利副知事、県酒造組合の有賀義裕会長と鈴木賢二特別顧問らが記念パネルを除幕した。

 乾杯用の県産酒、県が無料提供へ

 県は県産日本酒の消費拡大と知名度向上に向けて夏ごろをめどに、県内飲食店で乾杯用の県産酒を無料提供するキャンペーンを展開する。全国新酒鑑評会での「日本一」達成の盛り上がりを一過性にしないため、県産酒の魅力を継続的に発信する構えだ。

 詳細は今後詰めるが、対象となる飲食店の利用者に乾杯の際に使う日本酒を振る舞う方針で、今月中にも参加店舗を募る。県はこのほか、県内酒販小売店で県産酒を購入する際に使えるクーポン券を本年度も発行する。

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 全国新酒鑑評会 1911(明治44)年から続く国内最大規模の清酒鑑評会で、今年で110回目。酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催。1製造場につき、1点出品できる。研究所や国税庁の職員、醸造の専門家、酒造関係者らが香りや味を総合的に審査し、入賞のうち特に成績が優秀と認められた出品酒に金賞を贈る。