若手成長、ベテランの意地...競い合い好循環 全国新酒鑑評会9連覇

 
「昨年より出来が良かったので自信はあった。酒造りのレベルが全体的に上がっている」と話す鈴木さん

 県内の酒蔵を長年にわたり指導する県酒造組合特別顧問の鈴木賢二さん(60)=磐梯町=は、県産の日本酒が「9連覇」を達成した今年の全国新酒鑑評会について複数の出品酒が金賞の当落線上にあった可能性を指摘し、「全体的に酒のレベルが向上し、均質化されてきた。紙一重の差で金賞を逃した酒蔵も多かったのではないか」と分析した。

 鈴木さんによると、2021酒造年度(21年7月~22年6月)のコメはゆっくり溶ける性質があり、比較的扱いやすかった。傾向の似ていた16酒造年度を参考に対応するよう各蔵に助言したところ、この判断が的中。香りと味わいのバランスが良い酒に仕上がった。

 3月の県春季鑑評会の審査時点ではうまみが薄い面はあったが、一段と熟成させたことで、適度なふくよかさが生まれ、5月の全国新酒鑑評会でピークを迎えた。

 そして、もう一つのポイントとなったのがもろみを搾るタイミング。「1日でも搾る日が違うと、香りが変化してしまう」と鈴木さん。近年は結果を左右する工程として、重点的に指導している。

 鈴木さんは毎年、全国新酒鑑評会の審査とほぼ同じ環境で出品酒を分析し、これまで予想がおおむね当たってきたという。今年は本県の金賞受賞数を21銘柄と予想したが、結果は前年と同じ17銘柄。県内の複数の酒蔵の名前を挙げ、「昨年より出来が良かった。(受賞はできなかったが)金賞を取ってもおかしくない酒蔵が多かった」とたたえた。

 本県では県酒造組合が運営する県清酒アカデミー職業能力開発校から多くの人材が巣立ち、若手杜氏(とうじ)らが着実に成長している。鈴木さんは「『自分が一番いい酒を造る』という気持ちで互いに競い合っている。ベテラン杜氏にも『負けていられない』という意地があるのでは」と好循環が生まれている本県の酒蔵の強みを強調した。