震災後初、浪江から出品 鈴木酒造店、山形の蔵では金賞「恩返し」

 
古里浪江から震災後初めて「磐城壽」を出品した鈴木専務(中央)と若手蔵人たち

 浪江町で昨春に酒造りを再開した鈴木酒造店は、古里で醸した「磐城壽(ことぶき)」を東日本大震災後初めて出品したが入賞に至らなかった。一方、同社の蔵人たちが震災後に避難した山形県長井市で経営する鈴木酒造店長井蔵が出品した「一生幸福」は5年ぶりに金賞を獲得。蔵人たちは"浪江仕込み"の高い技術力を見せた。

 同社は震災の津波で酒蔵が流失。その後、長井市の東洋酒造を買い取り、同市で再出発した。一生幸福はその際に同酒造から受け継いだ銘柄だ。鈴木酒造店は昨春、浪江町の道の駅なみえに酒蔵を構え、古里で酒造りを再開。浪江と長井に事業拠点を置いている。

 鈴木荘司専務(45)は金賞受賞について「よそ者だった私たちを受け入れてくれた長井に恩返しができる」と喜んだ。浪江のコメと水を使った磐城壽は受賞を逃したが「出品することに意義があった」とし「悔しさをばねに、後進を育てたい」と語った。