新会長に開当男山酒造・渡部氏 福島県酒造組合、有賀氏は顧問に

 
「県産酒の技術力向上と消費拡大に取り組みたい」と述べる渡部氏

 県酒造組合は26日、西郷村で総会を開き、役員改選で新会長に渡部謙一氏(56)=開当男山酒造=を選んだ。会長の有賀義裕氏(68)=有賀醸造=は顧問に就いた。任期は2024年5月まで。

 渡部氏は南会津町出身。東京農大農学部卒。2010年から副会長を務めた。本県は25日に審査結果が発表された全国新酒鑑評会の都道府県別の金賞銘柄数で9回連続の「日本一」を達成した。渡部氏は「『ふくしまの酒』を全国に向けてアピールし、風評払拭の牽引(けんいん)役になれるようにしたい」と抱負を語った。

 有賀氏は白河市出身。玉川大農学部卒。18年から会長を2期4年務め、「最後の鑑評会で9連覇に記録を更新でき、花道を飾らせてもらった」と振り返った。

 各蔵、個性出すこと重要

 渡部氏は26日、福島民友新聞社のインタビューに応じ、県産日本酒のさらなるブランド力向上などに意欲を示した。

 ―就任の抱負は。
 「『心の豊かさ』の部分で社会に貢献できるのが酒造りだ。新型コロナウイルスの影響で飲み会などの日本酒を消費する機会が少なくなっているが、われわれの原点を大切にしたい」

 ―全国新酒鑑評会で9回連続「日本一」となった。
 「本県は技術力を持っている酒蔵が多い。ただ、鑑評会の出品酒だけでなく、晩酌で飲まれるような4合瓶(720ミリリットル)で1000円台くらいの市販酒も含め、全体的にレベルアップを図ることが必要だ。技術が向上し、どの蔵も味わいが似てきたという傾向もある。今後は各蔵が個性を出していくことも大切になる」

 ―人材育成については。
 「(組合が運営する)県清酒アカデミー職業能力開発校で酒造りの工程や理論などを教え、技術を指導している。同期生に絆が生まれ、卒業後も情報交換を密にしていることは強みだ」

 ―県民にメッセージを。
 「私が蔵に戻ってきた約30年前は県産日本酒に対する関心は薄く、イベントに来る人も少なかったが、現在は注目を浴びていることを実感する。『おらが酒』(自分の酒)と自慢してもらえるようにしたい」

 将来的なG1取得検討

 県酒造組合が26日開いた総会では、地域の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)の取得を検討することを新たに盛り込んだ本年度事業計画を承認した。

 GIは名称から産地を特定でき、品質などの特性が産地と結び付いている農林水産物のブランドを保護するための制度。本県では南会津町の「南郷トマト」、郡山市の「阿久津曲がりねぎ」、川俣町の「川俣シャモ」が登録されている。

 組合は県内ではそれぞれの地域によって酒造りの歴史や酒質などが異なることから、地域ごとの取得が現実的としている。今後は先進地視察などを通じ、GIについて理解を深める。

 このほか、酒蔵ツーリズムや各市町村が制定している「日本酒で乾杯条例」などの取り組みも進める。

 役員改選では副会長2人をいずれも再任した。

 会長=渡部謙一(開当男山酒造)▽副会長=山口恭司(笹の川酒造)唐橋裕幸(ほまれ酒造)▽専務理事=阿部淳▽理事=遊佐勇人(人気酒造)大谷浩男(大谷忠吉本店)新城壮一(辰泉酒造)細井信浩(国権酒造)東海林伸夫(夢心酒造)向井洋年(鶴乃江酒造)玄葉祐次郎(玄葉本店)鈴木孝市(曙酒造)島田洋人▽監事=松本健男(名倉山酒造)四家久央(四家酒造店)▽顧問=有賀義裕(有賀醸造)▽特別顧問=鈴木賢二