「酒どころ会津」実力発揮 金賞の蔵元、喜びに沸く、新酒鑑評会

 

 審査結果が25日に発表された2021酒造年度の全国新酒鑑評会で本県は都道府県別で全国トップとなる17銘柄が金賞を獲得し、金賞に輝いた会津の蔵元も喜びに沸いた。

 
 丁寧な作業積み重ね 国権酒造(南会津)

 昨年13回連続の金賞を逃した国権酒造(南会津町)が、金賞に返り咲いた。社長の細井信浩さん(50)は「初心に立ち返ることができた。理想の酒を追い求め、一つ一つ丁寧な作業を積み重ねた結果」と安堵(あんど)の表情を見せた。

 昨年の仕込みは想定外だった。溶けないと聞いていた酒米が予想以上に溶け、蔵本来の切れなどが不足したという。金賞は当たり前―。地元でそう言われるようになり、重圧も大きくなっていた。

 「正直落ち込んだよ。でも一喜一憂せず、普段通りを心がけた」と細井さん。金賞は逃したが、その後の各種鑑評会では最高賞を獲得し続けた。「技術、酒質に自信がある。ゼロからの再出発。これから真価が問われる」と未来を見据えた。


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「国権の味を全国にアピールしていく」と意気込む細井さん=国権酒造


 
 喜多方の良さを発信 笹正宗酒造(喜多方)

 昨年に続き2年連続の金賞を受賞した笹正宗酒造(喜多方市)社長の岩田悠二郎さん(35)は「喜多方市産の酒米で受賞できてうれしい。誰一人欠けても受賞できなかった」と喜ぶ。

 今年は「喜多方市の蔵元として地元の良さを発信したい」と、同市で酒米などを生産するジュイタックの風間勝さん(72)らが手がけた県産酒造好適米「夢の香」を使用した。岩田さんの兄で、杜氏(とうじ)を務める専務の高太郎さん(37)が温度管理を徹底し、香り豊かで味わい深い日本酒に仕上げた。

 今後の目標は、地元で生産した酒米の最高峰と言われる「山田錦」を使い、金賞を受賞することだ。悠二郎さんは「試作は始めている。挑戦を続け、おいしい日本酒を届けたい」と意気込む。

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2年連続の金賞受賞を喜ぶ(左から)岩田悠二郎さん、風間さん、高太郎さん=笹正宗酒造

 
 日本一貢献うれしい 豊國酒造(会津坂下)

 豊國酒造(会津坂下町)代表社員の高久禎也さん(68)は「ここ2年ぐらいはなかなか結果が出なかった。本県の(金賞受賞銘柄数)9回連続日本一に貢献できてうれしい」と笑顔を見せた。

 専務で高久さんの長男功嗣さん(33)に1月、長女礼依ちゃんが誕生した。出品酒の米を洗っている時に子どもが生まれたことで「今年は金賞を取らないとね、と話をしていた」と功嗣さん。金賞受賞とわが子の誕生で喜びは"二重奏"だ。

 出品に当たり、絞りの段階ごとに分けて取った酒をいくつか用意し、県日本酒アドバイザーの鈴木賢二さんの指導を受けた。高久さんは「一般的には『出始め』が勝負。今年はかなり鈴木先生のアドバイスが効いている」と大きくうなずいた。

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金賞受賞を喜ぶ高久禎也さん(右)と長男の功嗣さん=豊國酒造

 
 質の高さPRできた 鶴乃江酒造(会津若松) 

 金賞に返り咲いた「会津中将」を醸造する鶴乃江酒造(会津若松市)取締役の林ゆりさん(48)は「金賞受賞にほっとしている。本県に明るいニュースを届けることができてうれしい」と笑った。

 同社は2018酒造年度まで8年連続で金賞を受賞。コロナ禍で金賞選定がなかった19酒造年度を経て、20酒造年度は入賞にとどまった。林さんは県観光物産交流協会が福島市で25日夕方に行った9連覇を祝うセレモニーに出席し、関係者と乾杯を交わした。

 日本酒の消費量が落ち込んでおり、林さんは「酒蔵にとって苦しい状況の中、金賞受賞数日本一は福島の酒蔵全体の質の高さをPRできる。来年も金賞を受賞し、本県の日本一10連覇に貢献したい」と意気込んだ。

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福島市で9回連続日本一を祝って振る舞い酒で乾杯する林さん=鶴乃江酒造