【ふくしまの酒9連覇<中>】酒蔵と菓子店タッグ、日本酒スイーツ

 
「白河蔵めぐり酒ゼリー」を手にする古川社長。県内では日本酒スイーツが続々と登場している

 日本酒とお菓子の魅力を組み合わせた「日本酒スイーツ」が県内で続々と誕生している。日本酒や酒かすを原料の一部に使ったゼリーやケーキ、どら焼き、大福など商品もバラエティー豊か。酒蔵と菓子店が業界の垣根を越えてタッグを組み、ここ数年で商品開発が活発化した。

 「コンセプトは『お菓子で利き酒』。地元の酒蔵を知ってもらえる入り口にしたい」。老舗菓子店大黒屋(白河市)は、同市と矢吹町の4蔵元の日本酒や梅酒を使った「白河蔵めぐり酒ゼリー」を販売しており、古川雅裕社長(61)は商品に込めた思いを語る。

 元々は千駒酒造(同市)が1994(平成6)年に全国新酒鑑評会で初めて金賞に輝いたことを祝し、酒ゼリーの販売を開始した。

 4蔵元に品ぞろえを拡充したのは7年前。東日本大震災で倒壊などの被害を受けながらも、設備を再建して立ち上がる蔵元の姿を目にし「何とか応援したい」と胸を熱くしたからだ。菓子店としては珍しい酒類販売業の免許を取得し、ゼリーと酒のセットも扱っている。

 本県産の日本酒が全国新酒鑑評会で9連覇を達成した今年も4蔵元のうち、2蔵元が金賞に選ばれた。古川社長は「自分のことのようにうれしい。日本酒を使うお菓子作りは難しいが、同じ職人として福島を盛り上げたい」と力を込める。

 県菓子工業組合と県酒造協同組合が連携を強化し、日本酒スイーツを開発する「酣(たけなわ)プロジェクト」を始めたのは2020年度のことだった。酣の文字通り「酒」と「甘い」の融合に向けた交流が盛んになっている。今年2月には初のコンテスト「たけなワングランプリ」が開かれ、11菓子店と13蔵元の各ペアから17商品の出品があった。

 菓子処いづみや(本宮市)は市内の大天狗酒造の特別純米酒を使った「ち~ず酒すふれ」でおやつ部門グランプリを獲得。渡辺智紀代表(50)は「鑑評会で日本一を続ける福島だからこそできる企画」と話す。新商品の開発も模索しており、「お菓子を通じて、ふくしまの酒の新たな魅力を発信したい」と見据えた。