【ふくしまの酒9連覇<下>】日本酒だけじゃない 存在感増す県産
ウイスキーや焼酎、ワインにクラフトビール...。「ふくしまの酒」は近年、全国新酒鑑評会で9連覇を達成した日本酒以外でも存在感を増してきている。
「製造工程は全く違う。ただ『良い酒を造りたい』という造り手の思いは同じだ」。国際品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」で世界最高賞を受賞するなど、日本酒だけでなくウイスキーでも評価を高める笹の川酒造(郡山市)。山口哲蔵社長(68)は酒造りへの思いをそう語る。
ウイスキー製造免許を取得したのは東北で最も早い1946(昭和21)年。48年には焼酎製造免許も受け、三つの酒を柱に社業を続けてきた。89年にウイスキーの原酒製造を一時中止したが、残る原酒を使うなどして製品化と販売は続け、その灯は絶やさなかった。
「日本酒と違い、ウイスキーは長く時間がかかる酒。祖父の代から続けてきたウイスキー造りを継承しなければという思いがあった」と山口社長。2000年代に人気が再燃すると、16年に「安積蒸溜所」を開設し原酒製造を再開。その原酒を使ったウイスキーで今年、世界最高賞を手にした。
県内では近年、日本酒以外の酒も品評会で高評価を受け、ワインや焼酎など新規参入の動きも広がる。仙台国税局によると、17年から5年間の県内の酒類製造免許新規取得件数は33件。全て日本酒以外の酒だった。山口さんは「日本酒業界にとっては強力なライバル。負けないものを造っていかないと」と気を引き締める。
また日本酒業界にも新しい動きがある。いわき市の磐栄運送は17年、長野県下諏訪町の酒蔵で日本酒造りへの挑戦を始めた。
「地域の人々が地元ブランド復活を熱望していた。酒造りにも挑戦してみようと思った」と同社の村田裕之会長(62)。破産した同町の酒蔵を買い取り、諏訪御湖鶴(みこつる)酒造場として18年に仕込みを再開。わずか3年後の21年、国際品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」日本酒部門で最高賞を獲得した。村田会長は「地域に貢献しつつ、運送業の特性を生かし全国に御湖鶴を広めていきたい」と口にする。躍進を続ける日本酒が引っ張る「ふくしまの酒」は、新たな段階に入りつつある。(連載は鈴木健人、大内雄、矢島琢也、佐藤智哉が担当しました)
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