稲川酒造店が最優秀賞 東北清酒鑑評会、県別受賞数2年連続最多
仙台国税局は10日、2022年の東北清酒鑑評会の結果を発表した。純米酒の部は代表銘柄「七重郎」で知られる稲川酒造店(猪苗代町)が初めて最優秀賞に輝いた。末廣酒造博士蔵(会津美里町)が吟醸酒の部、佐藤酒造店(郡山市)が純米酒の部で次点の評価員特別賞となり、県内3製造場が上位に選ばれた。
本県は吟醸酒の部の11点と純米酒の部の15点の計26点が上位賞を含む優等賞に入り、県別で2年連続最多だった。山形が19点、秋田が15点で続いた。
東北地方には毎年春の全国新酒鑑評会で金賞を獲得する蔵元が多く、東北清酒鑑評会は全国トップレベルの鑑評会ともいわれる。
今回は21酒造年度(21年7月~22年6月)の清酒を対象に1製造場当たり2点以内の出品を受け付け、東北6県から吟醸酒の部に120製造場の137点、純米酒の部に116製造場の134点の出品があった。
審査は10月に行われ、仙台国税局や酒造技術の指導機関の担当者、杜氏(とうじ)らが味や香りなどを総合的に評価した。吟醸酒の部で43点、純米酒の部で47点を優等賞に選出し、優等賞から各部門の最優秀賞1点と評価員特別賞2点を決めた。
稲川酒造店「手間暇かけて造る」
純米酒の部で初の最優秀賞を獲得した稲川酒造店の塩谷隆一郎代表社員(50)は「県ハイテクプラザの技術指導や県内酒蔵との情報交換、おいしいコメを提供してくれる農家さんのおかげ」と喜ぶ。
受賞酒の「七重郎(白ラベル)」は山田錦を40%まで磨いたコメを使用しており、華やかな香りとまろやかで飲みやすい口当たりが特徴だ。今年の全国新酒鑑評会でも同銘柄で3年ぶりに金賞を受賞している。新型コロナウイルス禍の影響で昨年仕込んだ酒量は例年の半分ほどだったが、「その分、じっくり手間暇かけて造ることができた」という。
1848(嘉永元)年の創業以来、こだわりの地酒を造り続ける。全従業員が地元出身であることも蔵の特徴だ。塩谷さんは「今後も地元密着の酒蔵として地元から愛される酒を提供していきたい」と話した。
末廣酒造博士蔵「さらに上を目指したい」
末廣酒造博士蔵は、大吟醸「玄宰」で吟醸酒の部評価員特別賞を受賞した。新城大輝常務(33)は「酒を仕込んでから1年近くたち、華やかさにまろやかさがバランス良く加わり、良い酒に仕上がった」と胸を張った。
今冬の酒造りはこれから本格化する。新城さんは「特別賞に選ばれたうれしさも、最優秀賞を逃した悔しさもある。さらに上を目指したい」と力を込めた。
(受賞を喜ぶ新城常務)
佐藤酒造店「再び飲みたくなる酒を」
佐藤酒造店は純米酒の部に「純米大吟醸藤乃井」を出品、初の評価員特別賞に輝いた。
出品酒はフルーティーな味わいとまろやかな口触りが特徴。酒造りに影響はなかったが、3月の地震で蔵に被害が出るなどしていたため蔵人たちの喜びもひとしおという。佐藤修子社長(61)は「一度飲んだら再び飲みたくなるような手作りのお酒を今後も造っていきたい」と話した。
(受賞を喜ぶ佐藤社長)
受賞酒蔵
◇吟醸酒の部
▽最優秀賞=麓井酒造(山形県酒田市)▽評価員特別賞=米鶴酒造(山形県高畠町)末廣酒造博士蔵(会津美里町)▽優等賞(県内)=曙酒造(会津坂下町)榮川酒造(磐梯町)男山酒造店、白井酒造店、末廣酒造博士蔵(会津美里町)鶴乃江酒造、名倉山酒造(会津若松市)人気酒造、檜物屋酒造店(二本松市)国権酒造(南会津町)
◇純米酒の部
▽最優秀賞=稲川酒造店(猪苗代町)▽評価員特別賞=一ノ蔵本社蔵(宮城県大崎市)佐藤酒造店(郡山市)▽優等賞(県内)=金水晶酒造店(福島市)稲川酒造店(猪苗代町)榮川酒造(磐梯町)男山酒造店、白井酒造店(会津美里町)辰泉酒造、鶴乃江酒造、名倉山酒造、山口(会津若松市)佐藤酒造(三春町)佐藤酒造店(郡山市)豊国酒造(古殿町)国権酒造、開当男山酒造(南会津町)
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