福島県は金賞14銘柄、全国新酒鑑評会 10連覇ならず、トップ山形

 
金賞受賞を喜ぶ蔵元の関係者ら。セレモニーでは県産日本酒の認知度向上に向けた新たなロゴマークも発表された=24日午後、福島市・まちなか広場

 酒類総合研究所(広島県)は24日、2022酒造年度(22年7月~23年6月)の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会の審査結果を発表した。本県は14銘柄で金賞を獲得したが、都道府県別の金賞受賞銘柄数でトップを逃し、節目となる10回連続の「日本一」はならなかった。

 金賞受賞数が最も多かったのは山形県の20銘柄。兵庫県19銘柄、長野県16銘柄、新潟県15銘柄と続き、本県は5番目だった。全国から818点の出品があり、入賞394点(本県は28点)の中から最終審査の「決審」で、218点が金賞に選ばれた。

 県内の金賞受賞14銘柄のうち、「奥の松」で知られる東日本酒造協業組合(二本松市)は県内最多となる14回連続の受賞となり、「萬代芳」の白井酒造店(会津美里町)も10回連続と記録を伸ばした。「藤乃井」の佐藤酒造店(郡山市)は初めて金賞を受賞。「会津ほまれ」のほまれ酒造(喜多方市)は6年ぶり、「会州一」の山口(会津若松市)は9年ぶりの受賞となった。

 福島市では、各蔵元を招いてのセレモニーが開かれた。

 県酒造組合の渡部謙一会長ら関係者や内堀雅雄知事が金賞受賞を祝ったほか、県産日本酒の認知度向上に向けた新たなロゴマークがお披露目された。

 本県は、新型コロナウイルス禍で最終審査が中止となった19酒造年度を挟み、9回連続(12~21酒造年度)で日本一を達成していた。「10連覇」の金字塔こそ逃したものの、若手杜氏(とうじ)を含め本県で酒造りに携わる多くの人たちの熱意と技術は年々高まっており、「日本酒王国・福島」の実力を改めて全国に印象づけた。

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 全国新酒鑑評会 1911(明治44)年から続く国内最大規模の清酒鑑評会で、今年で111回目。酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催。1製造場につき1点出品できる。研究所や国税庁の職員、醸造の専門家、酒造関係者らが香りや味を総合的に審査し、入賞のうち特に成績が優秀と認められた出品酒に金賞を贈る。

 最高水準揺るがず 技術学んだ他県追い上げ

 【解説】連続記録を「10」の大台に乗せることはかなわなかった。日本一こそ逃したものの、入賞銘柄数28、金賞銘柄数14という数字はトップクラス。本県の製造レベルが国内最高水準にあり「福島の酒はうまい」という事実が揺らぐことはない。

 今回のコメは3年前と似ていて「ほどほどに硬い」と分析されていたが、仕込みが始まると「ここ10年で最も硬い」状態だったという。仕込みの過程で想定よりコメが溶けないと酒が薄くなってしまうため、低温管理して発酵を抑えてコメが溶けるのを待つなどの迅速な対応が必要となる。

 これまではコメが難しい年ほど本県の技術力が光っていたが、もともと製造技術が高い地域に加えて、本県から技術向上のノウハウを学んだ地域もレベルを上げてきている。本県が酒造りをリードし、業界全体の底上げに貢献しているのは確かで、追われる立場が続いていれば時に首位を譲ることもあるだろう。

 とはいえ、前人未到の「10回連続」の域に届かなかったことを残念に思う関係者も多いはず。その悔しさは、販売・消費増に力を向けて晴らしてほしい。

 日本酒の国内消費量が減少傾向にある中で、新型コロナウイルス禍もあった。新型コロナが5類に移行した今、外食や観光が徐々にコロナ禍前の姿を取り戻し、需要の好機が巡って来る。自分で楽しむのもいい、知人に薦めるのもいい。消費拡大で業界の努力に応えたい。(若松支社・阿部裕樹)

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